小説 | ナノ



森は好きだ。
辺りを探っているうちに色んな商品になるものがタダで見つかるから。

しかしこのご時世、やはり中々金が貯まらない。
この前の緑のカモさんが一番儲かったなぁ……
200ルピーぽーん、と出すんだもん。壺は10ルピーで牛乳がロンロン牧場でケチってもらって80ルピーだから合計で110ルピーの儲け。今時こんな美味しい話はない。
また会えないかなぁ。そしてまたカモられてくれないかなぁ……



「Hey、リンク!例の彼女がいるヨ!」

「あぁっ!!」



ん?
この静かな神殿に似合わない騒がしい音が聞こえた。

その音の発信元を辿ると回りが保護色のため見づらいことこの上ないが、この前のカモくんがいた。
噂をすればなんとやら、である。



「君っ!あの壺、商人に見せたら確かに珍しいけど10ルピーもしない、って言われたぞ!!」



うーむ。いきなりあの詐欺がばれてしまった。
鑑定士の人、目が良いなぁ。

さて、白を切るのは簡単だけど彼は久し振りにみつけた大物(のカモ)だ。ここで縁を切るつもりはさらさらない。



「実はその件なんですが、誠に申し訳ございませんでした。」



というわけで、私は作戦Bを実行する。

最初は頭を深々と下げて謝罪の意を示すでしょ。



「実は私も壺を仕入れた所に騙されていたようで、ついこの間そのことを知ったんです。」



次のステップとして、私も被害者であるということをアピール。
緑くんもそうだったんだ…、と呟いてるあたり私の様子にすっかり騙されているようだ。しめしめ。



「で、今度こそ間違いありません!正真正銘本家本元の幸運を運ぶ壺をご用意してあります!」



バァン!、という効果音と共に背中の荷物からこの前の商品よりも若干大きめで色鮮やかな壺を取り出す。
ただの壺と侮ることなかれ。
ちなみに配色は上がピンク系統で下にはおそらく花をあしらったと思われる模様が描かれている。



「ここから遠く離れた新天地の占い師の方が、運勢がだだ下がりの人にと一品一品丹精込めて作った作品でございます。」

「へぇー。」

「この前の壺はすごいキラキラしてたけど、これは控えめなのネ。」

「良いところに気付きましたね!!」



ビシッ、と青い妖精を指差す。

…あれ?もしかして青い妖精って珍しい?マニアには高く売れそうだなぁ、って思考が脱線してしまった。



「今になって考えますと、あのキラキラはかなり怪しかったのではないかと思っています。安っぽさがわからないように細工していたのではないかと考えておりまして。」

「確かに一理あるなぁ。」



緑くんは考えつつもうんうん、と頷きながら話を聞いてくれている。
いい流れだ。



「ですが、こちらの壺はそのような誤魔化しなどただの一辺もない優れた品質となっております。見てください、このどっしりとして威厳に満ちた佇まい!!そして細やかな模様も素敵ではありませんか?」



つー、と壺をなぞっていく。
あと持ってる手が疲れてきたけど、ここまでくればあと一息。



「今回この品は5000ルピーの所、この前のお詫びも込めてぽっきり150ルピーでご提供ですっ!!」

「買った!」



お買い上げ、毎度ありがとうございますー。



「ねぇ、リンク。また買って大丈夫なノ?」

「この前のは間違いみたいだし、大丈夫だろ。それにこんなに値引きしてもらって買わない方が損するよ!」



ひそひそと妖精と緑くんがしゃべる。
会話が筒抜けなんですけど。それでいいのか?
まぁ、私は商品を買って貰えさえすればなんでもいいのだけれど。







(この緑の人はやはりいいカモということが判明した)





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