小説 | ナノ



「ちょっとそこのかっこいい緑のお兄さん!!」



マスターソードを抜いたら7年の時が経っていた、なんて一体何人の人が信じてくれるだろうか。
俺も相棒のナビィも最初は信じられなくて。
しかし、荒廃した城下町やがノン城を見て痛すぎるくらい時の流れを知り、この世界に生きる人々に取ってこの7年は暗黒の時代だったことをひしひしと感じた。
とりあえず情報が少ない今はシークという人物の言葉を信じて(怪しいのに変わりないが)、カカリコ村へ行こうと破壊されている城下町の門へさしかかったときに動く物体を見つけた。



「Hey!リンク、呼ばれてるヨ?」

「えっ、あ、俺!?」

「はい、勿論です。私、お兄さんみたいなかっこいい人初めて見ましたよ!」



その動く物体はにこにこと笑う女の子で、背中に大きな荷物を背負っていた。
しかも俺のこと、かっこいい、とか。



「暗闇の中にいても輝きを放つ金髪!どんな宝石にも負けない光を宿すその青い瞳!さらに爽やか度がアップする緑の衣がまた似合う!!これは素質がないと着こなせない!!」



話を聞いててなんだか照れくさい。



「しかもお兄さんは幸運の星の元に生まれていると見えますねぇ。」

「えっ?」

「実はここだけの話、私さすらいの旅商人でございまして。ここで素敵なお兄さんに会えたのも何かのご縁。1つ特別に良い話があるんですよ。」



彼女はニコニコと笑いながら背中の大きな荷物を降ろしてごそごそ、と中を漁る。
すると青と白をベースとした陶器の壺が現れた。見た目が煌びやかで高級感に溢れている。



「私も最近手に入れた品なのですが、クタニ焼きという名前の壺でございまして。どことなく海の穏やかさを醸し出しつつ、高級感を忘れていない極上の逸材でございます。」

「へぇ。」

「なんだか神秘的ネ!」



壺の回りをナビィがゆっくりと旋回する。
すると彼女は囁き声に似た口調で話を続けた。



「実はこの品、まだあまり市場に出回っていない幻の壺でして。私もハイラル各地を巡り巡って出会えた奇跡の壺なのでございます。」



そして口調を戻して、



「この幻の一品、普通なら6900ルピーするところを緑のお兄さんにだけ特別な破格のお値段、なんとたった200ルピーでご提供!!破産覚悟!これは買わないと損だ!!!」

「えぇっ!?そんなに安くして君は損しないの?」

「だから今回だけの特別プライスと言ったではございませんか。」



ニヤリと笑った彼女は一旦その壺を俺に渡し、次は白い液体の入ったビンを取り出した。



「そしてそしてなんと!今回は初回特典ということで今では手に入る機会がめっきり減ってしまった濃厚なうまみぎっしりの牛乳もお付けしましょう!こんなサービスめったにありません!!」

「よし、買った!!」



そういえば空きビンに7年前の牛乳があったけど飲む気はなかったし、ちょうどいいや。



「ちょっとリンク!こんな壺を買ったって置く場所なんてないじゃない!」

「でもさ、せっかく安くしてくれたんだよ?お買い得じゃないか!」

「それはそうだけど…、」



買うのに乗り気じゃなかったナビィを俺はなんとか説き伏せて不思議な壺と牛乳を買った。
ちなみに牛乳は詰め替えてもらった。どうやらビンは非売品のようだ。

さて、今度こそカカリコ村に行かないと。







(お買い上げ、ありがとうございますー。)






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