小説 | ナノ



装備を付けたトレイル(今日はこの子の方がコンディションが良かった)をテルマの酒場まで引き連れていくと、テルマさんが南通りに立っていてその横には荷物が置かれていた。
ちなみに荷物はそこまで大きくないが、人間の手だけだと運ぶのが大変そうだ。
おそらくあれをこの子達に運ばせるのだろう。
テルマさんの他にはシャッドさんとラフレルさんしか居なかった。あれ?後の2人は?



「ありがとうなまえ。」

「これくらい平気ですよ。あっ、荷物を付けるの手伝いましょうか?」

「僕も手伝うよ。」



シャッドさんと一緒に荷物を取り付ける。
どうやら荷物の入っている箱が荷台のようになっているので馬で引いてこれらを持っていく、という感じだった。
荷物の中身が気になるが、大体の予想がついてしまう。
ハイラル城で使ってた大砲なんじゃないかなぁ、と思ってるんだが…。なんだか少し火薬臭いし。
ラフレルさんとテルマさんは何かを話し合ってるようだった。



「なんだかなまえちゃんに付き合わせちゃって悪いね。」

「大丈夫ですよ。それに、私にはよくわかりませんが皆さんはハイラルのために頑張っているんですよね?手伝えることがあればじゃんじゃん言って下さい!」



本当はこれからあなた達たちが何をするのか知っているし、ラスボスも、勇者が親しい友と別れなければならない最後も知っている。
でも、そんなことは言えないし言いたくもないし。何も知らない設定の私はこんなことしか言えないのだ。



「なまえ、あんたもこの2人に付いて行きな。」

「えっ!?」

「人数は多い方が何かと役に立つだろう?それにこの子は足手まといになるような馬鹿じゃないことは皆知ってるだろうしね。」



にっこりと笑うテルマさん。
えっ!?えっ!?本当に行ってもいいの!?てっきり皆を見送る側にいるもんだと思ってたのに。



「いっ、行かせてください!!」



シャッドさんとラフレルさんから反論の言葉が出るよりも前に私の口が勝手に動いていた。
だってだって!せっかくのチャンスだもの!!
普段チキンだけど、その時は驚くほどすんなり言葉が出た。



「さて、どうするかな。」

「彼女が行きたいって言ってるんだし、いいんじゃないかな?」



2人は苦笑しながら顔を見合わせていた。











「遅い。」



トレイルに荷物を引かせてお城へ向かうとハイラル城の門の手前にアッシュさんがいた。
ちなみにこんな荷物を持ってハイラル城に近づくのを門番(だと思う)兵士さん達に止められるかと思ったが、そんなことはなく本当にすんなり通れた。
いなかったアッシュさんかモイさんが何かしておいてくれたのだろうか?

あっ、アッシュさんと目があった。なんだか驚いた顔をしている。



「なっ…、どうしてなまえがここにいるんだ!?中は魔物がいて危険なんだぞ!!」

「テルマ殿に頼まれてしまってな。」

「それになまえちゃんが来たい、って言ったんだよ。」



ラフレルさんとシャッドさんがフォローを入れてくれた。
私も何か言わなくては!!



「あの、えっと、何も出来ないかもしれませんが、どうしても皆さんのお手伝いがしちゃくて!」



舌噛んだー!!
なんだよ、「しちゃくて」って!!!「したくて」でしょうが!!!!!!
穴があったら入りたいとはまさにこのことDA!!!



「いいんじゃないか、別に。」



ハイラル城へ続く門からモイさんが笑いながら顔を出していた。
あ、これは今のを聞いてた顔ですね。そうなんですね。



「だがっ、」

「それにさっきリンクを発見した。ここでいざこざをしてる暇なさそうだぞ。」

「では急いで彼を助けに全員で向かいますか。」



ラフレルさんの言葉にアッシュさんも渋々ながら頷く。
モイさんを先頭に彼等が走って門も中に消えていくのをトレイルを引っ張りながら私も遅れまいと後に続く。





ハイラル城は近くで見るとまさに圧巻の大きさだった。
その壮大で荘厳な姿に思わず息をのむ。
カーゴロックが上空に飛んでいるのと、この厚い雲さえなければもっと感動したかもしれない。



「なまえ、こっちだぞ!」



ぼんやりとお城を生で見た感動に浸っていると、モイさんに名前を呼ばれた。
そうだ、勇者を助けに来たんだっけ。
慌ててその声のした方に向かう。
というかモイさんの腕に鷹がいらっしゃるんですけど。いつの間に呼んだんだろう?

トレイルを連れて行くとラフレルさんとシャッドさんは荷物を外し、箱を開けた。
すると中から大きな大砲が出てきた。私ってばビンゴ!



「すまんがなまえ殿、この大砲が濡れないように傘を差しててもらえるかな。」

「はい。」



ラフレルさんから大きな黒っぽい傘をもらい、私はそれを大砲に差す。
もう自分が濡れていることに関してはたいぶ前からどうでもよくなってきている。

何やら大砲の準備をしている間、私はモイさんとアッシュさんの会話から勇者がここと反対の通路で魔物を倒していたことを知った。
こっちにはまだ来ていないとにらんだ彼がラフレルさんから聞いたハイラル城の構造も配慮した上で、ここで張っていれば彼の助けができるんじゃないかと思ってこの場所に陣取ったらしい。

モイさんの推理力がパンパない。普通にすごすぎる。

そしてその推理の通り、扉を開けて勇者がやって来た。
数多くの魔物が彼の行く手を阻もうと打って出たり、勇者を狙撃しようと狙いを定める。



「球を発射させるので気をつけてくだされ。」

「あっ、はい。」



大砲をよいしょ、と肩に担いだラフレルさんの注意があり、私は傘を差したまま体だけ若干離れる。

まず最初に狙撃のブルブリンが動いた。
火を纏った弓矢が発射されるタイミングでモイさんが鷹を放つ。
弓矢は勇者の目の前の所で落とされた。

次にアッシュさんが弓を打ってきたブルブリンを狙撃する。
彼女は弓の腕も確かなようで次々に倒される魔物達。

最後にラフレルさんの大砲が通路を通って勇者に襲いかかろうとしていたダイナフォス達を吹っ飛ばす。

ここのシーンは最高に燃えた気がする!基本勇者は1人だったから余計にそう感じたのかもしれないけど!!


鷹が優雅にターンをしてモイさんの腕に戻ってきたタイミングで壁が一部欠けてる通路から緑がこちらを見てきた。
皆その姿に手を振って答える。



「リンク、僕たちにも手伝わせてくれよ!」



シャッドさんのその言葉に彼が頷いたのを確認したレジスタンズは下の階に残っているブルブリンを倒しに討伐に向かっていった。

私?
一歩も微動だに出来なかったよ…。目線もずっと泳いでたしね…。
やっぱり勇者に会うなんてチキンな私には到底無理そうだなぁ……。

小さくため息をつきながらやはり大砲が濡れないようにとラフレルさんの後を追っていった。







(そういえばシャッドさんって戦えるの…?)





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