小説 | ナノ



「恋愛運でお願いします。」

「では行くぞ。グンディーロ ヨーイガーナ グンディーロ ヨーイガーナ…。」



わんわんに傘を貸してから数日後。
酒場に行く前に少しだけ占い屋に寄ってどうやったら勇者と会うことが出来るのか助言を扇いでみることを思いつき、それを実行してみた。
藁にもすがる思い、とまではいかないが、なにかいいアドバイスを貰えないかと内心期待はしている。

しばらくして水晶を見つめていた占い師が口を開く。



「その鳥は自ら命を絶ち自由を手にした…。潜在的革命的排他的インスタレーション!!」

「…え?」



彼女の言葉は高度すぎて私には理解できなかった。
というかゲームでは映像で教えてくださりませんでしたっけ?











「こんにちわー。」



酒場に入るのにカランコロンなんて音やベルの音はしないので、言葉で自分が来たことを伝える。
やはり昼間の酒場に人はあまりおらず、テーブルがけをしているテルマさんが見えた。



「テルマさん!それは私がやりますよ!!」



商品であるお酒をついだり、配合したりするのは一応やり方は教えてもらったが、酒場の看板であるテルマさんの仕事であって。
私はお手伝いという名の雑用ができればそれでいいんだ!だってキチンだもの!!



「なまえか、今日も早いねぇ。じゃぁお願いするよ。」

「はーい!」



ふきんを受け取ってテーブルを順に拭いていく。この作業にも慣れたものだ。

カウンターの近くにはいつもの指定席にルイーズがいた。少し声をかけておく。
ふわふわもふもふのルイーズちゃんはいつでも可愛いなぁ。



「そうだ。コレ、あんたのじゃないかい?」

「え?」



若干思考がルイーズに逸れかかったときに、声をかけられた。
そちら振り返るとそこには、淡い緑の色をした傘を手に持ったテルマさんが。
そのままその傘を渡された。

詳しく見なくてもわかる。
これは数日前の雨の日の夜、勇者の風よけとして南門に置いてきたあの傘だ。
それがどうしてここにあるのだろうか?



「リンクが持って来てくれたんだよ。」

「えっと、噂の勇者さんですよね?」

「あぁ。その時にアンタとリンクが会ったことない、って気づいてさ。ちょっと笑っちゃったよ。」



タイミングが悪いんですかねー、と軽く笑っておく。

私が勇者をストーキングして後ろから眺めてることは結構な頻度であるんだけどね。
心の中でだけ付け足しておく。



「そうそう。リンクの話じゃその傘は南門にあったらしいとか。」

「はい。早めに帰らせてもらった日に大きなわんちゃんが南門付近で倒れているのを見つけちゃいまして。」

「なるほど。その子のためにさして置いてきたってワケなんだね。」

「そんな感じです。」



大まかな事情はこんなもんだろう。
まさか狼になった勇者が倒れてたので、なんて言えないし。

というか、勇者は普通に酒場に来てたみたいだから体調は平気のようだ。
大事に至らなくてほんとに良かった。
彼に何かあったら誰がこのハイラルを救うんだ、って話だしね。



「おや、今日は私が一番かな?」



酒場の扉を開けて入ってきたのは、ラフレルさんだった。

そういえば最近よくレジスタンズの皆さんが一緒に出かけるのを目撃している。
なんだろう?武器の準備でもしているのだろうか?

いらっしゃい、とテルマさんが愛想良く答える。
私も遅れながらこんにちは、と言っておく。

すると、店の中を見ていたラフレルさんの目線が私の傘に止まった。



「もうそれを持っているということはリンク殿の話は聞いたのかな?」

「えっ、はい、…たぶん?」



さっきテルマさんと話した内容のことを聞かれてるんだと思うが、確証がないため曖昧な返事になってしまった。



「南門付近で倒れてた犬のために傘を置いてきてたんだってさ。」

「ほぅ。なまえ殿は優しいですな。」

「いえ、そんな。」



本当に優しいとかそんなんじゃないんです。
ただ偶然に勇者が行き倒れになるのを目撃しちゃって、体が勝手に動いちゃっただけなんです。
と、心の中でだけ付け足しておく。(なんだか今日は心の中だけで思うことが多いな)

そしてどうやらなぜ私の傘が南門にあったのか、皆疑問に思っていたらしい。
確かに不思議ではあるけどさ。



「そういえばリンク殿はなまえ殿に会いたがってる様子でしたぞ。」

「え。」

「確かにそうだね。ここで働いてる時もあるって言ったらひどく驚いてたよ。」

「え。」



そのまま勇者トークで盛り上がってる2人を見ながら若干放心した頭で思ったことはだた1つ。

…その話、本気ですか?







(なんだかフラグが立っちゃった気がしないでもない)






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