それは拙いものであっても

「お父さんおかえりなさい」
 大月が家のドアを開けると、眠そうな声で息子の葉月が声をかけてくれた。
 夜遅くなのに待っててくれたのだろう、息子の健気さに嬉しくなりながらも遅くまで起きていたことに対して注意する。明日も学校だろうと。
 すると葉月は泣きそうになりながらもだって、と言い、机のほうを指さした。見てみるとそこには美味しそうな夕ご飯。どうやら作ってくれたのだろう。
 驚きの声をあげながら葉月を見ると、小さくおやすみなさいと言って部屋へと引っ込む。
 その様子に苦笑しながらおやすみと返し、料理を見る。ふと亡くなった妻を思い出し、無性に懐かしく感じた。
 葉月の作った料理は見た目はまだまだ拙いもの。亡くなった妻も昔は料理する様子が危なっかしかったなーと感慨深げに思いながら、一生懸命料理を作ってくれた息子の様子を思い浮かべる。
 正直食べるのがもったいなく感じるが、せっかく作ってくれたものだ、食べないと。そう思い一口食べてみた。
 途端、大月は泣きそうになる。妻のつくってくれた料理を思い出したからだ。どこか似てるような気がして、でもどこか違くて。
 懐かしさがこみあげてきて、大月は息子が部屋に戻ってくれてよかったと思いながら料理を食べていた。

 

   

 


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