幽霊の歌
弐妹さん宅紫苑ちゃんお借りしました!
歌を聞くのは好きだ。それがどんなものでも。
聞こえてくる歌を心地よく感じながら、玻璃は思う。例え聞こえてくる歌が「とおりゃんせ」、しかも時間が夜だとしても。
暇なため、適当に散歩をしていると歌が聞こえたのだ。自分は幽霊だから大丈夫だけど、普通の人間とかが聞いたらやっぱり怖いかな、とも考え、玻璃は苦笑する。しかし、玻璃は未だに自分が幽霊になったことを信じ切れていない。記憶もほとんどなく、本当に自分は存在していたのかと不安になることもあった。
その歌声が気になり、聞こえるほうへと向かっていく。するとそこには、可愛らしい幽霊の『少女』霊華院紫苑がいた。どこか楽しげに歌う少女を、玻璃は目を離さずに見つめる。愛に貪欲で、知り合いの亜人の少女と重ねあわせてしまっているのか、玻璃は彼女のことが気になっていた。
「紫苑ちゃんは歌うのは好き?」
歌が途切れたとき、玻璃は歌っていた少女、紫苑に聞く。玻璃に気づいた紫苑は、彼のほうを見ながらこくりと頷いた。
その様子が可愛らしく、玻璃は嬉しそうにそうか、と言う。そして再び歌おうとしている紫苑に、問いかけた。次は一緒に歌っていいかと。
その問いに、紫苑は驚いたような顔で見つめる。別に嫌ならいいんだ、と玻璃は小さく言うが、紫苑はいいよ、と答えた。
嬉しさを全身に滲ませながら玻璃はありがとうと言った後、次は何を歌うのかと問う。紫苑は少し悩んだ素振りを見せると、カゴメと旋律にのせるようにして言った。
この時間帯だと驚かせることができるなあと玻璃はのんきに思いながら、同じタイミングで二人は歌い始めた。
その日、西京都のある場所では朝になるまで歌が聞こえていたという。