いつものできごと
「瑠璃ちゃんは、最近楽しい?」
学校への道を歩きながら、瑠璃は隣にいる幽霊の玻璃の言葉を聞く。
「楽しいわ。友達も、いるし」
最後のほうは小さく言ったのだが、彼には聞こえたのだろう、そうかと嬉しそうに言う声が聞こえる。なぜこんなにも嬉しそうなのかと思ったが、聞いてもいつも通りの答え、君が楽しいのが僕の幸せだからというものしか返ってこないことを知っている。
瑠璃はそれ以上何も言わず、黙って歩いていた。やはり慣れている相手だからか、無言のままでいても気まずくならない。むしろ心地よいという感じがする。玻璃のほうをちらりと見たが、彼も同じことを思っているのか、何も言わずに嬉しそうに隣いた。
やがて学校の門の前まで着く。名残惜しいような別れの時間に、瑠璃は玻璃にまた、と言って彼から離れる。玻璃は、振り返らない彼女に向かって手を振りながら、いってらっしゃいと小さく言った。