その花に祝福を
いつも駅で見る、紅い髪。ふわりと風に舞うそれは、人目を惹きつけるようだ。現に、常和恙(とこわつつが)は彼女に見惚れている。その瞬間、彼は恋に落ちた。
「やはり、告白するにはインパクトが必要なのだろうか」
あれから数日後、駅にある休憩所で、常和は同僚であるかたす嘯にある相談をしていた。
「いや、話したことないんでしょ? それでいきなり告白はどうかと思う」
「そうか……」
この間結婚したかたすなら、何かいいアイデアが出るだろうと告白の方法を尋ねてみたが、いい答えは出ない。常和も自分で何か考えてみたが、かたすにことごとくダメ出しされた。
「やはり筋肉を前面に押し出した告白はだめか」
「むしろひかれると思う」
悩んでいても時間はただ過ぎていくばかり。27年間生きていて、こんな気持ちは初めてで。また明日も見ることしかできないのかと溜息をつくと、かたすは思いがけない言葉をくれた。
「一応、家族に聞いてみる。明日、兄家族に会う予定もあるし」
こういったものは女性の意見も聞くのがいいと思うし、と言うかたすがすごく頼もしく見えて、常和は思わずかたすを抱きしめる。
「ありがとう! 本当にありがとう、感謝する!」
いきなりのことでかたすは驚き、やめて離れてと抗議をする。しかし、常和はあまりの嬉しさに抗議の言葉など聞こえず抱きしめていた。
また今日も彼女を見る。横顔が、綺麗だと感じた。もしかしたら、彼氏がいるかもしれない。しかし、それでもよかった。ただ、自分みたいなやつが好きなのだと、ただそういうことを伝えられたらいいと思っているだけだから。だから、今はまだ少し彼女のことを見ていたいと思っていた。