出会いと恐怖の優しさを
大和三年四月。澪は、高校卒業と同時に憧れていた特別高等警察に就職した。そして、ある事件を追うために第一課の所属を希望した。
見事望みどおりの配属に決まった澪は、仕事をしながらある事件を追う。しかし、それはすでに時効を迎えていたもので、調べるのにかなりの労力と時間を要した。
それから一年後の大和四年。四月は、出会いの季節と誰が言っていたか。その日、特高の一課でも新たな人が入ってきた。
ジュリエルという、セラフィムという星からきた女性。どこか、人を見透かすような目、人並み外れた容姿に、澪は恐怖を感じた。
関わらなければいい。同じ部署であるため、そのことは難しいが、澪はなるべくジュリエルと関わらないように努めた。
ある日、いつものように仕事が終わった後に資料を見る。例の事件を調べるためなのだが、凄惨な事件の資料も数多いために見るのに苦労する。中には、女性が乱暴されたものがあり、そういったものを見るたびに澪は吐き気を覚えた。
ふと、ある資料を見る。ただ、何気なくだった。しかし、それを見た途端に澪はとてつもない気持ち悪さを感じた。胃の中のものが、逆流する。思わず口を手で押さえ、必死に耐えていた。
しばらくすると、収まってくる。大丈夫、いつものことだと言い聞かせて。誰もいないだろうと周りを見回す。こんな姿、決して人に見せたくなかった。
しかし、入口のほうを見ると、そこには珍しい人物がいた。
長い緑かかった銀髪に、金の瞳。まるで射抜くようなその眼は、恐怖の対象。
あの場面を見られたのだと瞬時に理解する。弱いところなど、誰にも、家族ですら見せたくなかったのに。
何か言われる前に、はやくここから出なければ。急いで資料を片付けると、澪は資料室の入口に立っていたジュリエルと顔を合わせず、何も言わせないうちにお疲れさまと声をかけて横を通る。
はやく、家に帰りたい。今は、ただそれだけを願っていた。