泪にふれたきらめきを頂戴な
he side .
「…泣かないでよ、」
困ったように言うとその涙はまた溢れて止まらなくなった。その瞳が揺ら揺らと夏の海に反射する光の粒のようできらきら揺らめいてほんとうに綺麗だと思った。
「…逆になんで笑ってるの?」
痛くない訳ないのにと彼女は涙をこぼす。彼女のこぼす青い液体とは反対の真っ赤な液体が俺の手の平からこぼれてる。
「…んー心配してくれてるのが嬉しくて?」
いつも俺に冷たいからさあ、と言うとそれくらいなら幾らでもしてあげるから無茶しないでと次は怒られる。あれ、どうしたら正解なんだろう。
この手にできた怪我、これは所謂不可抗力と言うのかもしれない。
この施設じゃ病んで自分で命を終えようとする人もいる、それを邪魔するのは果たして良いことなのか悪いことなのか分からないけどそんな悲しいことはしてほしくなかった。
そしてそんな自分の感情にもおどろいた、他人に興味をもっている自分が。ナイフで脈を切ろうとしている彼女の友達の姿を見て彼女の啼き顔が浮かんだ、だから気がついたらそれを止めていた。自分の手が血塗れになっているのも構いなく。
彼女の啼く顔を見たくないと思ったのに結局啼かせてしまったことに落胆する。変わらなかったと。
だけど如何してだろう、 彼女が俺の為に啼いてくれるのが嬉しくて傷ついた手なんか放り出して思いきり抱きしめたい。その髪からは甘い匂いがして、感触はふわりと柔らかくて、暑がりな彼女の体温はきっと高くてその熱が僕に伝わるんだ。
「駄目…手怪我してるのに、」
「大丈夫、片手でも気持ち良くしてあげるから」
違うそういう問題じゃなくてと顔を真っ赤にさせて必死になって応えるから可愛くて仕方なかった。この狭い箱のような施設の中じゃする事なんてなくて男と女がいればする事なんて一つだけだった。そこに愛なんてあったのかなんて分からない、たまたま彼女が此処にいてたまたま彼女がそこそこ美人だったから、付き合っているのかもしれない。なんて失礼な話だけどそういうものだ。
人は会った人の数だけ好きになる、会ったこともない人を好きになんかならない。だからどんな運命だったとしてもこの狭いまるで水槽のような箱の中で僕らは小さな恋をする。
せまく息苦しいそれでも愛おしいこの箱の中で。
「