深い青で満たして悩んでしまうの



あの日から明けた次の週、どんな顔をして会えばいいのかわからないままその日は来てしまった。化粧をしても隠し切れない隈と腫れたまぶた。今もすこしだけひりひりと痛む。

はじめて男性を受け入れた其処も昨日までは何かが入っていたような違和感があったけど時間が経つとすぐになくなった、痛みに慣れていくように私の玉森くんを思う気持ちも薄らいでくれたらいいのに。はじめて彼から奪って感じた痛みは私をただ虚しくさせただけだった。


会社に着くと彼の姿は見えなくて心の中ですこし安堵する、だけどその日は何をしていても脳裏に浮かぶのは彼のことで会ってしまったらどんな顔をしたらいいのかわからないから会いたくないはずなのに反面、会いたいと顔を見たいと思ってしまっている私がいた。


だけどやっぱりその日は会わなくて寂しいのかなんなのかわからない気持ちで帰ろうとしたとき、会社のロビーを出たときいつものすこし低くて落ち着いた声が聞えた。



「なに、帰る気?」

下から見上げると髪があなたの顔を少し隠してるけど見える、すこし不貞腐れたような彼の顔。


「…あ、」
「…ちょっと付き合って」

そういって腕をつかまれてそのまま無理を言わさず彼の後をついていくことになった。不謹慎にも私はこんなときなのに彼の後ろを歩けることが嬉しくて鼓動がはげしくなっていた。



ついたら所謂ホテルで私は隣の彼を見上げた。有無を言わさず連行されて部屋に入ると彼はベッドに腰掛ける。



「…あれから考えたんだけど、」

何してくれんだとか、彼女に何ていったらいいのか考えたんだけどと彼はゆっくりと悠長に喋るからそれが詰め寄られているような感覚がしてすこし怖かった。



「俺のどこがそんなにすきなの?」
「…」
「やっぱ顔?」
「…うん、そうかも」
「馬鹿だよね…俺に好かれたいんだったらそこはもっと具体的なとこゆうとこでしょ」

「ごめん…」
「やっぱ馬鹿、」

呆れたように彼は溜息を吐く、あの時と同じように。



「苗字ならさ、俺じゃなくても別のやつが放っとかないでしょ」
「…駄目、」
「なにが駄目なの…?」
「玉森くんじゃないと駄目なの」

「ほんとしょうがないよね、」

俺苗字さんがあんなにえろいって知らなかったよ、なんて意地悪をいう。



「わたし…許してもらおうとは思ってないよ」

許してもらえるようなことじゃないし、許してもらおうと思ってるんならあの時あんな覚悟していなかった、後悔もしていないつもりでいる。あるのは罪悪感とほんのすこしの後ろめたさ。


「…だろうね、」

じゃぁと彼が言うと衝撃的な発言をされた。




「ここで脱いで、」
「…え」

「俺さ、あの時すごく腹が立った。情けなかったし悔しかった、男として」

俺にあんだけ屈辱的なことしたんだからさ、自分も同じ気持ち味わってみなよ。そういった。目の前でそういう彼に私は愕然とした。わたしの見てきた彼はこんなことを言うような人じゃなっかった、それとも付き合った彼女にはこういう態度だったのか。どちらにせよ歪んだ玉森くんの考えがひどく私を興奮させた。


私はね、どんな君も大好きで仕方ないの。そんな私を知ったらきっと君は気味悪がるだろうけど欲情せずにはいられないの。


目の前で服を脱いでいくと動悸が止まらない、心臓の音が煩くて彼の息遣いが聞えなくなるから邪魔に思えた。



「…ぜんぶ?」
「…全部」

見てる、彼が見てると思うと頭の先からつま先まで全身が震える。身体を包むように手で隠すと退けてと冷たい声が部屋に響く。愛しい君の声。

彼は携帯を取り出して写真を撮る。それに私が困惑していると、俺が感じたぐらい屈辱してくれないとって君は言う。だけどごめんね、すごく恥ずかしいのに玉森くんの携帯の中に私という存在が残ること、君が私の裸を見ていることに私は興奮しかしなくて全然屈辱になんかならないの。

それは決定的な違い。わたしが君を好きなことと、君が私をどうとも思っていないから生まれる違い。



「これでおあいこだね、」

そう言う彼にいってあげたい。それは私にとってただの喜びにしかならないよって。


fin .

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