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ファーストキス
「大ちゃん、これ新作だって」
「まじ、ほんと美味しそう」
そういってスターバックスに来てふたりで新作を頼む。新作の春のホットドリンクがふたつと桜のシフォンケーキをひとつ。それを半分こして食べるなんて仲いいのかな、なんて。
「タンブラーも売ってるんだね」
「ほんとだ、可愛い」
こんなことに共感してくれて一緒に楽しんでくれる人なんてきっと男の人では少ないんだろうけど大ちゃんは別。一緒に嬉しいことを共感してくれる、それがとっても嬉しいなんて口が裂けてもいえないけど。素直じゃないのは私の悪いとこ。
「でも意外とお高いね」
「そうだね、一個4千円かあ…」
そんなことを話してる間にシフォンケーキとドリンクが二つが乗ったものが手渡されて席に座る。味はというと。
「「…んまい。」」
って被るもんだからおかしくて笑ってしまった。なんだか馬鹿みたいだねってそう思いながらもこんなことも楽しいと思える今日がしあわせ。
「みてみて、中のケーキがピンクだよ」
「わあ、お洒落…」
「なんか可愛くて食べるのもったいないね」
「だね、なんかさくらの花びらがまわりに散りばめられてるし」
そういっておいしくいただいた後話も区切りがついてそろそろ出ようと大ちゃんが片してくれている間にリップを塗りなおす。はじめてのデートなのに大ちゃんだとあんまり緊張しないなあ、それよりも幸せが尽きないなあって思いふけっていた。
「なにそれ、リップ?」
「うん。」
「なんの香り?」
「桃だよ」
「ふーん」
「これ思わずキスしたくなる唇になれるってcmで話題の…」
そこまで言って気まずくなる、いや取り返しのつかないことを言ってしまった。どうか聞えなかったふりとかしてくれないかなって思ったけど無理でした。ふたりして顔を染めた。
初デートでしかもまだキスもしたことないのにこの話題はしくじった。
「あっ…その、」
すると返ってきたのは意外な言葉だった。そしていつもより低い声で言うから胸が大きくトクンと跳ねた。
「なにそれ、なんでそんな可愛いことすんの」
「…え、ぇ?」
「そんなことわざわざしなくても、いつでもするよ?」
テーブルに肘をついてぐいっと横を向いて距離を縮める、それに近…って思わずにはいられなかった。向かい席に座ればよかったと今更ながら後悔した。
「…でも中々してくれなかったし」
「…そりゃタイミングとか場所とかはじめてだから色々男の子には考えなきゃいけないことがあるんです。」
「そう…なの?」
「…でも、それもどうでも良くなっちゃった」
ちゅっと可愛らしい音がなってはいないけどそんな軽やかなキスをした。一瞬だったから人には見られていないと思う。前はガラス張りだし、階は高いから見える人もいない。それでも…
「こんなとこでっ…」
「名前が可愛すぎるから悪いんだよ」
「理不尽だよ」
「…させたくしたのそっちのくせに」
「え?」
「…鈍感」
そういってまた軽くキスをした。わたしが何か言う前にしょうもないことをいうからやっぱり最後はしまらない人だなあと可愛くおもう。ちなみにキスはラテの甘い味がした。
「ちなみにファーストキスの返却はもちろんできません」
「…それがなければカッコ良かったのになぁ」
「なんでだよっ」
最後はやっぱり可愛い君だけどいつもよりかっこよくて本当はいつだって胸が騒いでるのは秘密。もっと必死になる姿を私だけが見たいから。
ファーストキス
( あまい、あまい )
( キスを君としました。)
fin .