抱きしめたら折れてしまいそうだ。
そう思うほどにタクトは華奢だ。

「どしたの、スガタ」
手止まってるよーと明るく響くタクトの声にスガタは我に返った。
演劇部恒例の中庭での体力作り(部長曰くファンサービス)、タクトとスガタでペアを組んでの体操の真っ只中だ。
タクトの背中を押していた手を止めて黙り込んでしまったスガタを不思議そうに赤い瞳が覗き込んでくる。
「ん…いや、タクト、少し痩せたかなって」
「えー痩せてないし。むしろここに来てから太ったと思うよ」
「そう?」
「そう! 前はどっちかって言えば食が細かったからじいちゃんにもっと食えってよく言われたけどね。島に来てからは食事も美味しいものばっかりで食べ過ぎてるくらい」
そう言って苦笑するタクトに嘘を言っている節はなく、たまに夕食に誘った時の食の進み具合を思えば確かなのだろうが。
それでも、と思う。
普段制服を着込んでいる分には気にはならないが、こうして薄手の体操着姿の彼を見るとその痩身に驚く。スガタと大して変わらない身長のはずなのに、どこか危うい線の細さがタクトにはあった。
この彼が、自分たちと同じ特別なシルシを持ち、日々戦いに身を投じているとは到底思えまい。けれど、それが現実で、自分にはその助力になることも出来ないのだと思い知る度にスガタは悔しくなった。
ワコとの約束を違えたいわけじゃない――でも、力を持たないことがこんなに歯痒いなんて。
だから、せめて。
「……頼むから、無理だけはしないでくれよ」
薄い背中を辿るようにそっと手を添わせ、祈るようにスガタは呟いた。


きみを守る力が欲しいのに



初めてタクトキャラデザを見た時「ほっそ!」と思ったものです。
その背中に背負っているものの重さを思うとハラハラする…
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モドル
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