うざいほど主張。同じく主張したい方はご自由に。
※ザメク×タウバーンで擬人化注意。
ネタ派生なのでザメクさんはひきこもり(フード付き)、タウさんは若干お子様設定。
ただし、根底にあるのはいつものスガタクです。






――真っ暗だ。
目を覚ましてまず浮かんだのはそんな事で、すぐに目の前を覆う存在に気付いてザメクは身を起こした。目深に被ったフードが動きに合わせて揺れては狭い視界を影が行き来する。それを煩わしく思うことも無くぐるりと辺りに目を向けるが、明かりの落ちた室内はしんと静まり返り、自分以外の気配は無いようだった。
「……タウバーンはどこに行ったんだ」
いつも傍でちょこちょこと落ち着かなく過ごしている少年の姿が無いことに知らず眉間に皴を刻む。元気を有り余らせてじっとしていられない質の彼だから、また鉄砲玉のようにどこかへ遊びにいってしまったのだろうとは容易に想像がついた。放って置けばそのうち戻って来るだろうとは思ったけれど、起きて早々に姿が見当たらないというのは何とも目覚めが悪く感じる。
そうして彼が帰って来るのをじっと待つのも落ち着かず、仕方なく彼を探しに行くことにした。まるで兄弟かのように彼と容姿が似ているレシュバルや、事あるごとに彼にちょっかいを掛け可愛がっているべトレーダ辺りの所へでも入り浸っているのか。アインゴットには無理矢理に怖い話を聞かせられて眠れなくなって以来あまり近寄っていないようなので、候補としては除外する。
寝台から降り立ち、睡眠をとり過ぎた為か軋む節々を軽く慣らして扉へと向かう。
「……ん?」
ドアノブに手を掛けたところで間の抜けた機械音が鳴り響いて足を止めた。僅かな振動を感じてジャケットのポケットを探り、出てきた携帯電話を掴み大きく溜息を吐いた。
デフォルト設定の質素な着信音にしていた筈だがいつの間にやら変えられていたようだ。犯人が誰かなんて誰何の必要も無いくらい分かりきっている。表示された名前を確認して更に溜息を重ねて通話ボタンを押せば、楽しげな声が「もしもーし」と弾むように響いた。
「……タウバーン、お前どこに居るんだ」
今し方探しに行こうとしていた少年からの偶然なのか作為的なのか分からない電話に、ザメクは些かトーンを落として切り出した。大抵の者ならばそれだけで萎縮してしまうところだが「どこだと思う?」なんて、それは愉快そうに話す少年には効果は無い。元からザメクの支配下にある者達とは違い、あくまで部外者であり余所者であるからなのか、どんなにザメクの機嫌が悪かろうが気にも留めない。そこが悩みの種でもあり変わって欲しくはない愛しい部分だと相反するところで。見えない彼に肩を竦めると口を開いた。
「分からないから聞いているんだが。それとも迷子か? それなら迎えに行ってやる」
『え、ザメクが部屋から出るなんてそっちの方が迷子になるんじゃないの?』
止めた方がいいよー、とまるで子供に対するかのように言われ言葉に詰まる。
確かに滅多に外出しないザメクにとっては部屋から一歩出ただけでも異世界と言えた。大抵のことは自室で事足りるし、外での用事はタウバーンに行かせるか共に出掛けるかで一人で出歩くことはまず無い。迷っても誰かに訊けばいいのだが、人間不信のきらいがあるザメクは人に頼ろうという選択肢をそもそも持ち合わせていないのだ。
タウバーンからの着信が無ければ部屋から出ていたと白状すれば何を言われるか分かったものではないなと口を噤むと、落ちる沈黙に少し間延びした柔らかな声が言葉を紡ぐ。
『とにかくボクももうすぐそっちに帰るからちょっとだけ待ってて。あ、そうそう、さっきヨドックさんに美味しそうなお菓子貰ったんだ〜。帰ったら一緒に食べよ』
告げられた内容に、今日の遊び相手はヨドックだったのかと、眼鏡を掛けた科学バカを思い浮かべて顔を顰めた。本当にタウバーンの交友関係は分からない。ザメクの与り知らぬところで着々と人脈を広げているのに空恐ろしさすら感じるが、それも彼の人柄の成せる業なのだろう。
「了解。……いい加減退屈なんだ、早く帰って来いよ」
『寂しいの間違いでしょー? あとちょっとだから我慢してよね――あっと、じゃあ切るね。またあとで!』
寂しいわけあるかと反論する間もなく通話は途切れ、無機質な音が受話口から流れる。対面していても電話越しでもまったく勝手気ままな奴だと携帯をポケットに仕舞い、扉へ向けていた足をぐるりと方向転換させると、室内に設えられた簡易キッチンを目指す。お菓子を食べると言うからにはお茶のひとつも用意しておくべきだろうとの判断からだ。
料理はからっきしのザメクでもコーヒーや紅茶に関しては別で、タウバーンに驚かれる程の腕前を持っている。自分のために淹れる事で上手くなったそれが、今は彼と楽しむために揮われているのが不思議だと思う。
真っ暗な室内。
真っ暗な世界。
そこに一人きりだった自分。
そこに現れた瞬く星のような少年。
暗闇に慣れて光を恐れるようになっていた自分が、唯一手を伸ばしたいと願った輝けるもの。目深に被ったフードを外し、隠していた全てを晒せるのは彼だけだ、なんて。
「気付いている……はずないか」
妙に聡く、妙に鈍い少年を思い描いて。
お茶を淹れ終わる頃には戻るだろうかと音を立てるケトルの前、フードの影にそっと笑った。
誰かのために、きみのために――それだけで世界は光に満たされるから。


不可視の世界に星ひとしずく



うざいアイコンでヒッキーぶりをアピール…
マイペースタウさんにもっと虐げられるザメクさんを書きたいです。いずれ。
@11-0517

モドル
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