※最終回の…


一面の銀河だ――そう思わず呟く。南十字島から見上げたそれとは違い、全てを見渡す限りに広がる星の海。そんな現実感の伴わない世界の中でタクトはスガタと向かい合っていた。こうして真っ直ぐにスガタを見たのは彼がアプリボワゼする直前だっただろうか。大して時間は経っていない筈なのに、久しく顔を合わせていなかったかのような錯覚に陥りそうになる。
そうして、平時と変わらず微笑する顔が憎らしくて、タクトは歯を食いしばると下げていた手を思い切り――振り上げた。僅かに目を見開かせる少年を視界に捉えて、瞬間、乾いた音が鼓膜を揺らす。ワンテンポ遅れて痺れるような痛みが手のひらに伝わり顔を顰めた。
「タクト……?」
恐る恐るとスガタの声に名を呼ばれれば、もう限界だった。
「…――っ二度目は無いからな!」
ぐらぐらと立っていられないくらいに憤りが湧いてくる。堪えていたすべてを吐き出すみたいに声を荒げて、頬を押さえて呆然としているスガタを睨みつけた。いつかの状況に似ているとどこか冷静な部分で考えて、すぐにどうでもいいと振り払う。
何も知らなかったあの時と今とでは何もかも、違う。
「自分を犠牲にしてザメクを封印して……それで世界を救えればいいと思っていたんなら大きな間違いだ!」
怒鳴る事で体の至る所に刻まれた傷が痛むのも気にも留めず、揺ぎ無く相対する琥珀を見据えた。そこに一瞬見せた驚きの色は既に無く、ただ静かにタクトを見ていた。
「お前だけで完結させて、またワコを悲しませるのかよ……!」
二人と一人でもいいから三人でただ他愛ない時間を過ごしていたかった。もしそこから一人居なくなるのだとしたら自分の方で、この青の王ではなかったはずだ。
それが、どうして。
「そんなことワコは望んでいなかった!」
いつの間にか歪む視界につられるように声が掠れ出る。
スガタを取り戻すことが出来たのは奇跡のようなものだ。ぼろぼろになっても最期まで戦い抜いてくれた相棒である白き騎士のサイバディの無残な姿を見れば、いかに限界を超えていたのか分かる。
ひとつでもピースが欠けていたら失われていたかもしれない。
世界はまた陽の光を纏い花を咲かせて美しく輝いて。けれど、そこに居なくてはならない人がいなかったら。
きっと、自分はおかしくなってしまう。
「――タクトは?」
穏やかに響く声にはっとなって俯きかけていた顔を上げると、不意に伸ばされた指先がタクトの目尻に触れた。ぴり、と鈍い痛みを伴う沁みるような感覚に、知らぬ間に涙を零していたことに気付いた。
「タクトは悲しんでくれた?」
優しい所作で涙を拭って、スガタが緩く口角を上げる。きっと今までなら馬鹿な事を言うなと笑い飛ばしてしまいたくなる問い掛けも、彼を失いかけて必死に追いかけた今となってはちっとも笑えやしなかった。
似たような宿命を持った、島で最初に出来た友人で唯一無二の親友。そう思っていた。けれどそれだけではなかったのだと、燻る強い想いに気付いてしまったら、もう誤魔化せない。
「……ッあったりまえだ、お前のせいで十年は寿命が縮んだよ!」
責任取れ! と僅かに声を上擦らせながら悪態をつけば、目の前の琥珀が一瞬見開かれ、すぐに甘やかに歪んだ。
悔しい悔しい悔しい。
その笑顔ひとつで絶望に冷え切っていた心がふわりと綻んでいく。体中に蔓延る軋むような痛みもいっそ忘れそうになるくらいに幸福に満ち満ちている。
なんて単純なんだと悔し紛れに眉を顰めるが、スガタの笑みは深くなるばかりだった。
ああもう本当に――
「当然だ。お前が嫌がろうが最後まで責任取ってやるさ」
指先が離れたかと思うと、今度は濡れた眦にスガタの口唇が軽い音を立てて触れて、くすりと笑う気配に堪らず身体を戦慄かせた。
「す、がた…っのばーッか……!」
本当に――好きで好きで好きすぎて、悔しいなんてありえない!


素直になんてまだなれない



なんだこれツンデレ? とはいえ最終回!映画クオリティの作画で驚きつつ、ちゃんとハッピーエンドで嬉しかったー!しかもsgtk的にもおいしいとかさすが公式ありがとうーまだまだ貢がせて頂きます。とりあえず10日のイベントで新情報があればいいなと期待中。
@11-0408

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