※23話冒頭のアレ。もえとか無い


人を好きになるって何なんだろうな。
唐突に話し出すスガタにタクトは妙な顔で相対していた。
早朝の稽古は秋を感じさせ僅かに肌寒く、板張りの床に着いた素足をひんやりとさせる。
まだ寝惚けていた頭はスガタの言葉ですっかり覚醒し、言われた意味を飲み込もうと躍起になっていた。口では冗談めかして返して、けれど彼が本気で言っているのだとその真っ直ぐな視線で感じ取る。稽古中に私語をするような男ではないことも知っている。だと言うのに、いつかの雨の日と同じ、ワコを賭け事に使うことも彼女を大切にしているスガタの言動とは到底思えなかった。
タクトのために時間を割いて行われる稽古も、ここ最近は一段と厳しさを増していて、どこか焦りのようなものが見え隠れしていた。いつも穏やかさを含んで向けられる瞳も、冷たく突き放すような色でもってタクトを映す。
違和感ばかりが付き纏い気持ち悪い。
なのに、お前は何を隠しているんだと問うことが出来なかったのは、きっと聞きたくない言葉を告げられるのを恐れていたからだ。心の奥底に潜む秘めた想いを踏み躙られるかもしれないと、どこかで気付いていたからだ。
そうして、残酷な決断を迫られることに怯えていたのだ。


突然何を言い出すんだと雄弁に語る紅い瞳で見つめてくるタクトに、スガタはただ静かに視線を返した。竹刀を握る手に力を入れて、溢れそうになる感情を押さえ込む。
今話した全ての感情をお前に向けているのだと吐き出してしまいたかった。好きだと告げてしまいたかった。少なからず似たような想いをタクトも持っているのだと気付いていたから尚更に。
けれど、この身に刻まれたシルシと島を覆う呪われた宿命が許さない。タクトが宣言したようにサイバディを全て破壊すると言うことは、敵対勢力である綺羅星十字団が所持するそれだけではなく、スガタがドライバーとなるザメクも含まれる。近い未来、否が応にも剣を交える事になるだろう。ドライバーを傷付けずに戦い続けてきた彼でも、桁違いの力を持つ王のサイバディと対峙した時思い知るはずだ。本気で、相手を殺すつもりで挑まなければ倒すことは叶わないと。
そしてその状況に直面した時、優しい彼が躊躇うのは想像に難くない。他に方法は無いのかと戦いを避けるかもしれない。もう、引き返せないところまで自分たちは来てしまっているのに。
ならば――と、スガタはひとつの道を選んでいた。
自己満足だと罵られても構わない。
丘の上で向き合った時のようにスガタの勝手さに怒りを見せるだろうか。
それでも、躊躇する心を少しでも救えればいい。
刃を向けることになれば、きっときみを傷付けるから。
「……お前には嫌な事ばかり押し付けているな」
でも、それももう終わりだと小さく笑う。

だから最後に。
悪を演じる僕を、せめてきみの手で――殺してくれ


叶わぬ想いに沈む願い



色々覚悟決めちゃってるよねスガタさん、と思ったらとんだ雰囲気ポエムに。おかげでもえが無い。堪えられなくなったら消そう…
@11-0401

モドル
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