さらさらとペンが紙を滑る音が耳朶を掠めていく。
それは、時折思い出したように止まりまた動き出してを繰り返す。静か過ぎる空間にただその音だけが木霊しているのがとても心地好い。
「スガタ」
「ん、なに?」
「重いんだけど」
「そう?」
不満の声を上げるタクトにそっと首を傾げてスガタが応える。
前を向くタクトの位置からは確認できないけれど、きっと楽しげに口元を綻ばせているのだろう笑みを含む声だ。
「背後にひっつかれてたら重いに決まってるじゃない」
はあ、と零される溜息。タクトの意見はもっともで、先程から課題に向かう彼をスガタの腕が抱き込むように後ろから回されていた。自然と体重がかかる姿勢になることもあり、タクトが文句のひとつも言いたくなるのは至極当然だった。
「じゃあ、早く課題終わらせて構ってくれないかな」
タクトの顔が見えないなんて退屈だよ。
悪びれるふうもなく耳元でそう囁く。次いで首筋をぺろりと辿る感触にタクトは身体を震わせた。
「〜〜〜っ! スーガーター!」
舐められたと認識するもみるみる赤くなる顔を隠すでもなくタクトはスガタを思い切り振り返った。
それも彼の計算のうちだと気付くのは、もう少し後の話。


こっちを向いて。



甘えたがりなスガタさん。
@10-1123

モドル
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