屋上への階段は昼休みや放課後でない限りはほとんど人気が無い。
休み時間――そんな周囲から死角となる屋上手前の重い鉄扉の前で、スガタとタクトは口付けを交わしていた。普段なら学校でなんて絶対に嫌だと拒むタクトだが今回は彼からの誘いで、実はそういったことは今までも度々あった。気まぐれなのかと最初のうちこそスガタもあまり深く考えることはなかったのだが、ここ最近頻度が上がったように思う。
あの、日死の巫女の封印が破られた日からは、特に。
「…ん…はぁ」
息継ぎもままならない程に互いの舌を絡めあう。時折逃げをうつそれを追ってまた縺れて高まる熱は留まるところを知らない。階下で響く喧騒も二人にはやけに遠く聞こえた。
「――タクト」
僅かに口唇を離して名を呼べば、高揚して薄っすらと水の膜を張った緋色の瞳が開かれる。ぼんやりと見つめてくる緋色はスガタを捉えると哀しげに歪められて、タクトがスガタにまわした腕に力を入れることで再開されるキスにすぐに閉じられてしまう。
――いつもそうだ。
ふとした瞬間に何かを思い出して、その重さに耐えられなくなると、タクトはキスを求めてくる。
それにスガタも気付いていたけれど、タクトに理由を問うことはしなかった。彼が自分から話そうとしない以上、無理矢理聞き出してこの関係が壊れるのはスガタとて望んでいない。
「すが…た、ふぁ……ん」
舌先で歯列をなぞり口内を隅々まで味わうように蹂躙すれば、立っていることも辛くなってきたのか体重を掛けてくるタクトの細い腰を強く引き寄せた。少しの距離も離れたくないと抱きしめる力を強くする。
彼が何かを想ってスガタを求めるのならそれでいい、心の距離があっても身体の距離ぐらいゼロでありたいと貪欲にも思った。
たとえ卑怯だと言われようが彼が手に入るのなら、タクトがスガタを利用するそれすら逆手に利用してやる。
――そう易々と手放してやるものか。
口付けの合間、スガタはタクトの名をそっと刻むと微かに口角を上げた。


キスの算段



タクトが過去の事を思い出して情緒不安定になってたりしたらおいしいよね。で、利用して利用される関係というかそんなお話。
16話があまりにも神回すぎてずっと見てます。ナツオの存在が大きすぎるタクトとか…なにもうかわいい。この可愛さを語り合いたくて本気で茶を開きたくなる…
@11-0128

モドル
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テーマ「人外ファンタジー」
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