「・・・っていう見出しで今度だそうかと思ってるんだよね。」 部室で次に載せる記事をまとめていると、ふいに自席で行儀よく座ってポテチを食べてる田中に呼ばれ、そちらへ向かうと1枚のメモ書きをみせられた。 くねくねしてるのに読めるギリギリの字体を書けるのは、ある意味才能であるのだろうか。 「へぇ。」 俺はさほど興味もないので聞き流す。そんなことで呼ばれたんか。 書きたいなら勝手に書けばいい。俺には俺の仕事があるんだ。遊びにつきやってる暇は無い。 アh・・・バカのせいで時間を無駄にしたな。 俺はそのまま元の席に戻ろうと踵を返そうとした。 しかしアホによりそれは叶わなかった。 「てことでよろしくっ!!」 目の前にポテチで油ぎった親指を突き出す田中。 「・・・は?」 ・・・まさか・・・・ 「|錦副部長!我々新聞部の今後のために 、一肌脱いでくれたまえ!! ・・・はい、取材よろしく!」 そう言って田中は取材道具を渡してくる。 新聞部は基本、部費がすずめの涙程なので大まかな機器などは部員で使い回す。 一応パソコンは2台あるが、どちらも元学校の備品で不調になったものをお下がりにもらったやつである。 ひとつは部長専用。ひとつは他部員で回す。所々ガタが来てるが、手書きよりワープロソフトの方が断然いいのでないよりマシだ。 それにこの新聞部は大体が趣味目的で、それこそ同好会のようなものであるため、これくらいがちょうどいいのだが・・・ いやそんなことは今はどうでも良い 「・・・・・・」 とりあえず目の前に出された親指を反対に曲げてやった。 「なんで俺がやるんだ。てか今後のためってなんだ。」 依然ソファでポテチを食い続ける田中。 「いや〜、あの佐藤美桜《さとうみおう》のことを取り上げれば新聞部安泰かなって・・・。あんだけ格好の餌があるのにそういえば記事にしてなかったし。 あとあと、皆佐藤くん大好きでしょ?そんな佐藤美桜の事だったら皆新聞読んでくれると思ったんだ!!」 なんって頭良くて健気なんだ僕は!! そう自画自賛した田中はポテチを口に含む。 いやいやだから、そんな興奮ぎみに言われても・・・ 「だから、なんでそれを俺にやらせようとしてんの!和久井でもいいじゃんか。」 和久井は数少ない新聞部の一員だ。 今彼は委員会の仕事をやってるためここにはいない。 そもそも、自分の担当する箇所を期日までに修了してあれば、毎日顔を出す必要はない。 まぁ用がなく暇な時でも、俺と田中は放課後ほぼ部室に入り浸ってるいのだが。 「だって桃也、佐藤くんと同じクラスでしょ?和久井は一年生だし、いきなり上級生の取材は可哀想じゃん。」 自分の指を舐めしゃぶり、食べ終わったポテチの袋をゴミ箱に捨て、メガネをシャツの裾で拭く田中。 指ぐらいせめてティッシュで拭けや汚ぇな・・・ まぁまぁ顔は良いんだが、こういうところが残念なヤツなんだよなコイツ。 「それに、会ったこともない僕よりも喋ったことないけど同クラで顔見知りの桃也の方が、話しかけやすいでしょ?」 じゃ、よろしくっ! そう言って田中は逃げるように出ていった。その速さはボルトをも超えるだろう・・・ いやおい、まだ納得してねぇよ。 |