誠凜無駄話 03 | ナノ


※ぬるめのR15作品?
※ひたすら下品
※管理人はどっちかというと火黒の方が好き





「皆さんは童貞ですk
「はいストップー。ストップストップー」

黒子のテロのような発言を遮ったのは日向だった。伊月も黒子に目線を合わせ諭す。

「駄目だろ黒子、いきなりそんなこと言ったら。めっ」
「キャラ崩壊どころじゃねぇよ」
「つーか出オチだろこれ」

降旗が眉を下げ、福田もため息を吐いた。黒子はぷっとむくれた。

「だって気になったんですもん」
「可愛く言っても駄目だからな?」
「話題としてアウトだ」

伊月と日向は譲らない。

「合宿で夜に話す、とかなら少しはわかるんだけどな…」

木吉は苦笑いした。そう、ここはまたしても部活終わりの部室なのだ。これから濃い性的な話をするには正直向かないだろう。

しかし黒子は挫けなかった。黒子だけは諦めず、戦った――。

「とりあえず火神くんは童貞で処女ですよね」
「ぅおおおおおおおい!!」

ばしぃと音を立てて火神は右手を唸らせ黒子の口をふさいだ。火神の頬は訳のわからない羞恥で真っ赤だ。

「何言ってんだよ!!オマエ、本当、何言ってんだよぉぉ!!!!」
「ひふぁひへふ(※いたいです)」
「なんでしょじょなんて言い出すんだ!ばかっ」
「火神、狙われてる狙われてる」
「死守しろよ本当…どっちをかはわからんが特に後ろを…」

降旗・福田はげっそりと火神に注意をした。

「今日は河原休みか…」
「俺乗りきれる気がしない。河原のばか」

福田の呟きに降旗がむくれて答えた。

「つーか黒子。聞かなくたって全員童貞だってー!」
「コガそんなハッキリ言わなくても!」
「…………あ、でも土田は彼女いるよな?どうなんだ?」

木吉がのんびりと言う。だからさぁ。

「木吉はどうして話題を広げちゃうんだよ!」
「いっぺん死んでこいダァホ!!!!」

木吉が炸裂させる天然ボケに伊月・日向からの本気の叱責が飛ぶ。もはや狙っているだろ木吉。水戸部は心配そうにおろおろと彼らの一歩外で眉を下げている。さてどうやって収拾をつけようか。

小金井がきょとん、と木吉に告げた。

「え?ツッチーなら今日彼女と帰るからって先に下校したよ?」

なんという危機回避能力なんだ土田。運が良いだけともいうが、土田もなかなか侮れない。

「なんだ、そうなのか」

木吉はほんの少し残念そうな声を出したが、そしたら帰ろうかと言い始めた。

「……ちょっと待て」

日向が僅かに違和感を感じて、木吉を引き留めた。

「木吉、お前なんか隠してるだろ」
「!」

木吉は一片の陰りもなく、にこっと笑った。

「俺は何も隠してないぞ!」

………嘘くせー。

日向は厳しく木吉を追い詰める。

「なんだ?お前はもう一人前ってか?ん?」
「つうか日向も話拡げんな!!」
「るっせー伊月!!これはなんか…男としてのプライドがかかってるんだよ!!」
「必死だな!」
「大丈夫だ、日向。俺は一応童貞だ」

木吉はきりっと宣言した。部室がしん…と静まり返った。

「……………いちおう?」

日向が聞き返す。

「おう。なんか入院してるときにな、看護婦さんに襲われかけたんだ」
「ねぇ、それどこのAV?」
「貞操は守ったぞ!」
「うん、よく頑張ったね偉い偉い」

伊月は生温い視線を木吉に向けた。話を聞いていた黒子は、火神の制服の裾をくいくいっ、と引っ張った。

「……あの、火神くんは、ナースってグッときますか?」
「え?あー……まぁ」
「じゃあ、僕頑張りますね。それで火神くんにお注射打ってあげます」
「は?俺注射嫌い」
「そうなんですか、残念です」

黒子は一度火神から視線を外した。

「降旗、今のは……」
「スレッスレだ…火神が素で回避したな。でも気は抜けないぞ福田」

1年2人はこそこそと審議をする。黒子は再び火神を見上げ、微笑んだ。

「でも大丈夫ですよ…ちゃんと準備して、痛くしませんから。きっと何回か熱いお注射したら火神くんも病みつきになっちゃうと思いますよ」

「「セウトー」」

降旗・福田はだるそうに判定を下す。若干投げやり感が否めない。

「いや、セクハラとしては完全にアウトだろ後輩諸君」
「お前ら判断基準どんどん甘くなってるぞ」

日向と伊月は苦い顔をした。火神は怪訝そうに黒子を見下ろす。

「お前はさっきからなんで注射の話してくるんだ?」
「教えてあげましょうか?」
「お願いやめて」

黒子を遮る福田の声は悲痛なものだった。

「つうか、火神ナース好きなの?いがーい」
「そうスか?」
「アメリカにいたしさ、もっとこう、刺激的なのが好きそうかなって。ひもビキニ?」
「ひもっ……うーん、あいつらのエロ本はなんかケバくて下品で苦手だったな…です」

小金井の言葉に火神が少し頬を赤くしながら答えた。

「あれ?じゃあ前に部室にあったナースのエロ本って」

※94Q参照。伊月がはっと火神を見る。その後ろでは日向がクラッチタイムに入る音がしていた。

しかし、

「いやっ、アレは俺んじゃねーよ!!です!!」

とんだ濡れ衣だと火神は顔を真っ青にして否定した。疑わしいと猜疑心丸出しの目が幾らか火神に向けられたが、黒子が火神の援護射撃をする。

「火神くんは嘘をついていないですよ。あと、彼の部屋にはエロ本、一冊も置いていなかったですし」
「それはそれで問題あるだろ」
「つーか、見落としてるだけじゃねぇの?」

男が一冊もエロ本持ってねぇとか、と日向は火神を凝視した。火神は怯えながらも視線を受け止めた。

そんな火神を守ろうと、黒子は一生懸命火神を弁護した。

「でも、寝室のベッドの下にもラックの裏っかわにもなかったし、ブックカバー変えてもなかったです!押入れもクローゼットもどこにも!全部確認しました!火神くんは無実です!」

「黒子ォォォォォ!!!お前は他人ン家にきて一体何やってんだよォォォ!!」
「プライバシーって知ってるか?」

火神は再び叫ぶ。木吉も珍しく正しくつっこんだ。

「あー、もしかしてネットで済ませてるとか」

「履歴にもなんにもなかったです」

「だから…ッ」
「もう何も言うまい…」

伊月はため息をついた。火神は耳まで紅潮させ、キッと黒子を睨んだ。

「で、でも俺知ってんだかんな!黒子だってタンパク質そうな顔して官能小説読んでるんだぜ!!?」
「はぁ?!」
「ウワァァァなんかハイレベルな変態くさい!!」
「でも火神惜しい!タンパク質じゃなくて淡白だ!」

騒ぎたてる周囲を見て、黒子はやれやれと首を振った。

「あれは芸術作品です。小説家が男を勃たせたり女を濡らせたりする為に全力を注いで書き上げた至高の芸術なんです」
「もっともらしくとんでもねえこと言ってるなお前」
「それ言ったらAVもエロ本もそうだよ」

そして遂に小金井が音をあげた。

「もー!これだったらフツーにまともにエロ話しようよ!!俺メイドコスとか好き!!」
「バカヤロウ小金井!!そこは猫耳メイドだろうが!」
「そこかよ!!つかそうじゃなくて、」

この流れはヤバイだろ。日向まで話に混じり始めたし、水戸部は小金井が翻訳しない限り発言力はゼロだ。後輩は黒子をどうにか抑えることで精一杯、もうここまで来るとストッパーは伊月しかいない。

どうにか止めるぞ、と伊月が覚悟を決めた時だった。

「そういえば、伊月は競泳水着が好きだったよな!あとはレズとかだっけ」

木吉がやらかした。部室内の温度がちょっと下がった。伊月の一瞬の沈黙が答えだった。

「伊月…?」
「うわぁぁぁん!木吉!プライバシーって知ってるか!?」

伊月は涙目で先程の木吉の言葉をまんま言い返した。だが、伊月の抵抗虚しく会話は続いた。


そして、結局伊月も一緒になってエロ話に興じ始めた頃――輪になり話し合う彼らの背後には凄絶な笑顔を浮かべた相田リコが立っていた。



20130219

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