秀徳無駄話 03 | ナノ


※ツイッターbotでよく見掛けるやつをネタに妄想して書き出したので、ほとんど管理人の創作ではない(重要)
※幼児化
※緑高緑





秀徳幼稚園ひよこ組の緑間真太郎と高尾和成はとても仲が良い。一見和成が真太郎を好いているだけの一方的に見える関係性ではあるが、その実和成と同じくらい真太郎は和成を好いていた。それこそひよこ組を担当している宮地先生があまりの仲の良さに心配になるほどだ。

今日も楽しく園児たちは園庭や室内を駆け回っている。宮地は先生としていつも通り園児の相手をしていたが、真太郎の機嫌がものすごく良いことに気が付いた。宮地は真太郎の横にしゃがんで声をかけた。

「しんたろ、お前今日随分機嫌が良いじゃねーか。良いことがあったのか?おは朝とか」

眼鏡の奥で長い睫毛をぱちぱちさせて真太郎は答えた。

「きょうのかにざは6いだったのだよ」
「うっわ、めっちゃフツー」

ラッキーアイテムはピンクのうさぎ、だったらしく真太郎の腕の中にはピンク色をしたうさぎさんのぬいぐるみがいた。真太郎はその少し大きめなうさぎをぎゅうと抱き締めて、俯いて宮地にもじもじと言う。

「でも……きのうたかおが、おっきくなったらけっこんしよっていったのだよ」

ほにゃりと頬を緩めて、真太郎は言った。真太郎は感情の起伏がかなり小さい子供だ。その真太郎がここまで感情を露にしているのだから、和成に言われた言葉が余程嬉しかったのだろう。そんな真太郎を前にして宮地は笑う。――さぁてどうやってつっこもうか。むしろ放置するのが最善なのか?うん、可愛いんだよ、コイツらほんと可愛いんだけどね、ちょっと間違ってるっつうかね。

今は大人しくしているが真太郎は普段そのワガママの激しさに一番手を煩わせられている相手である。そんなこともあり宮地はちょっぴり意地悪な気分になって、にやにやと笑いながら緑間に言ってやった。

「そりゃよかったな。でも残念だったなぁ、結婚は男同士じゃできねぇんだよ」
「え」
「結婚するのは男と女じゃなきゃダメなんだよなぁー」

通りすがりに同じく先生である木村が宮地に大人気ねーぞ、と呆れながら声をかけ歩いていった。

勿論その事実は真太郎にとって衝撃的なものだったのだろう。真太郎はぽかんとした後に、瞳にいっぱい涙を溜めて、口を真一文字に結んだ。

「〜〜ふぇ、」

あ、やべー。

流石に泣き出すとまでは思っていなかった宮地は慌てて真太郎に何かしらのフォローをいれようとした。とはいえどんなフォローがこの偏屈なガキに有効であるのか。宮地は自分の短絡的な言動から発生したミスに気が付いて頭が痛くなった。

真太郎の異変に気がついたのか、他の友達と遊んでいた和成がぱたぱたと真太郎に駆け寄ってきた。和成は真太郎の頭に手をのせて、真太郎の顔を覗き込んだ。

「しんちゃんないてる、どっかいたいの?」
「ぅ…いたくないっ」
「ほんと?じゃ、どぉしたの」
「べつに、な、もないのだよ」

真太郎は和成からぷいと顔を背けてしまう。和成はきょとと頭を傾けて、宮地を振り返った。

「みやじせんせぇ、しんちゃんどぉしたの」
「いや……ちょっとばかし余計なことを言ったというか…」
「?」

宮地は和成に簡単に、同性では結婚できないことを告げた。この事実は隠し立てしたところでどうにかなるものでもない。乱暴なやり方ではあるが、どうせだったら二人まとめて泣かせてあやして、事態を今日一日だけで一気に終息させてしまおうと思ったのだった。

しかし、話を聞いた和成は、

「なぁんだ、そんなこと」

と笑った。今度は宮地が驚く番だ。真太郎ほどではないにしろ、和成もショックを受けるだろうと予想していたのにそうでもない。

「ねーねーしんちゃん、あのね、」

ぐずぐずとべそをかいている真太郎の耳に和成は小さな手をくっつけて、こしょこしょとないしょ話を始めた。ないしょ話は短かったが、真太郎は聞き終えるとぴたりと泣くのを止めた。

「ねー?だからもうなくなよ、しんちゃん」
「……わかったのだよ」

にぱっと和成が真太郎に笑いかければ真太郎もまだ目の端に水滴をつけたまま頷いた。笑ってはいないが、どこか満足げだ。和成は何事もなかったかのようにそのまま真太郎の手を引いて、積木遊びをしている一群へと駆けていった。

「転ぶなよー」

宮地はしゃがんだまま、苦笑いをした。度々思ってはいるが、子供には敵わない。宮地が対処に困っていたことをないしょ話ひとつでこうも簡単に片付けられてしまうとは。

ただ、和成の声はないしょ話には少し大きかったらしく、その内容は宮地にもばっちり聞こえていた。

『けっこんなんてしなくてもね、ずぅっとずぅっといっしょにいようよ』

和成は大した人物に成長しそうだなぁと宮地は微笑した。手を煩わせられることは多くても、幼稚園の先生としてきっと仲良く育っていく彼らのこれからが宮地は楽しみだった。





「――と、いう話だったのサ…………」
「戻ってこい宮地!」

練習終わりの部室。ベンチに座った宮地は膝の上に肘をつき、組んだ手の上に額をのせて、語り終えた。木村と大坪は宮地の見た夢の話にぞっと顔を青くした。

「なんでそんなにおそろしい夢を見てるんだ!!最後の方なんて仲を認めちゃってるじゃねぇか!」
「…なんだか聞いたことがあるなと思ったら、人気なツイートでそういう話があったな。偶然見たことがある。ハッシュタグが不穏なヤツだ」
「宮地………見ちゃったのか!?」
「ははっ…………うっかりbotをフォローなんてするもんじゃねぇな、全く関係ないアカウントだったのに流れて来やがった…」

どうやら超大型SNS『つぶやいたー』に書かれていた┌(┌^o^)┐ツイートをうっかり見てしまったことが、宮地の夢に影響を与えてしまったようだった。

「世の中の腐女子マジ轢く…轢き殺す…」

宮地は呪詛のような言葉を吐いた。木村と大坪も何も言えない。(宮地清志にとってこの時点での幸福な点は、「宮地センパイに轢き殺されるなら本望ですうううううん」「でも冥土の土産に高尾くんといちゃいちゃしてくらひゃいおなしゃす!!緑間くんでも可!!」とどっちにしろ世迷いごとを抜かす腐れ女子の存在を知らないことだ。)

木村は宮地の肩をぽんぽん、と叩いた。

「でも夢で良かったじゃないか。それは現実じゃあない」
「!だが正夢とかたまに」
「悪いが大坪、ちょっと天然は控えてくれ。どっかの鉄心ともかぶる」

木村が励ますが、宮地はさっきから体勢を変えない。憂鬱な真っ黒いオーラがうねうねと発せられている。

「……もしかして、まだ他にもあるのか?」

大坪は今度は注意して言葉を選び尋ねた。宮地の肩がぴくりと揺れる。どうやらあたりらしい。

「嫌なら良いが、話してすっきりするのなら最後まで聞くぞ?」

大坪が優しく穏やかに言うと、宮地はばっと顔をあげて…へにゃあと表情を崩した。目を見ると若干だが涙が浮かんでいる。

宮地は叫んだ。

「すっっっっっげぇ可愛かったんだよあいつらぁぁぁぁぁ!!!!」
「は?」

木村は意外すぎる内容についていけず思わず聞き返していた。

「だから!俺の!妄想なんだけどよ!!緑間なんてまんまお人形みたいだし、髪とかもう絹みたいだったし、高尾は笑うと更に可愛いんだよ、ありもしない母性を擽られる!!頬っぺたぷにっぷにだし勿論ゴツくないしちっちぇーし柔らかいし!!」
「宮地、落ち着け。まず落ち着こう。クールになるんだ」
「それはただの夢だ。幻だ」

大坪と木村は真顔で暴走する宮地を止めていた。

「でもっ、でもなっ!ほんとに!」

しかし尚その話をやめない宮地に対して、木村は急に口調を変え始めた。

「でもじゃありません!いい加減にしなさい清志!!そんな不気味なことばかり言って!(裏声)」
「ぶっはッ」

木村はわざとらしい高い声でピシャリと宮地を叱りつけた。おそらく笑いをとることで事態を終息させようとしたの…だろう?目論み通り宮地は噴き出した。

――しかし大坪は笑ったりせず、その木村の肩に手を置いた……。

「……かあさんその辺にしといてやれよ(低音)」

ノった。

「ッ!…そんなこと言って!いつも貴方は甘やかしてばかりじゃない!(裏声)」
「だって、ほら、見てみろ。清志も悄気ちゃってるじゃないか。確かに甘いかもしれないがコイツにも色々あるんだ、な?(包容力)」
「………もう…しょうがないわね…(裏声)」
「も、おまえらやめっ、ぶふっ」


「何をしてるんですか先輩方」


暴走した彼らを止めたのは緑間だった。軽蔑すら感じさせるような冷えきった声だった。個人練習を終え部室に戻ってきたのだ。その背中には高尾が俯いて頭をぶつけ凭れている。普段と違い、妙に静かだ。よく見れば肩が小刻みに震えていた。

「…………ッ、……ッ…」

……どうやら笑いすぎて声が出ず、呼吸すら出来ていないようだった。

「死ぬな高尾」
「……………むりっ…!!」

どこから聞かれていたのだろうか。三年レギュラーは苦笑いを浮かべていたが、最後に開き直ったのか宮地が一年に命じた。

「取り敢えずお前ら、ちっさい頃の写真を今度見せろ」
「は?」

唐突な命令を受け緑間は頭から疑問符をとばし、高尾はそれが更によくわからないツボに入ったらしく、その場に崩れ落ちた。大坪と木村も幼稚園児な後輩の姿がどんなものかは気になっていたので宮地の発言に文句はなかったが、「宮地って後輩大好きだよなぁ」としみじみ思ったのだった。



20121208

茶番劇を削ったり、後から手を加える可能性が高いです。


back




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -