帝光無駄話 01 | ナノ


※飛び交うネットスラング注意





全ての始まりは帝光バスケ部の駄犬、黄瀬だった。


「あおみねっちぃ!!わんわんおするッス!!」


数秒後、八つのひんやりとした目が黄瀬に向けられた。

「黄瀬ェ…そりゃねーだろ」
「黄瀬ちーん」
「だからお前は駄目なのだよ」
「あざといですよ黄瀬くん…」
「ちっ違ッちがうッス本当に言い間違えたんすよぉ!!」

顔を真っ赤に染めてぱたぱたと手を振る仕草からは嘘は見受けられない。どうやら本当に言い間違えたらしい。

しかし黒子は懐疑的だ。

「にしても…言い間違えますかね。わんわんおでしょ、う…あ」
「テwツwww」

黒子も間違えた。

「黒子っち!黒子っちがわんわんおって言ったッス!!かわいい!あああ録音したかったッスぅぅ!!勿論心のメモリには永久保存したッスけどね!でもワンモア!」
「黄瀬くん黙ってくれませんかねわりと死にたくなるんで」
「安定の黒子厨なのだよ」
「つかwwwお前らwww奇跡wwwだろwww」
「息抜きだからってネットスラング使わないでください青峰くん」
「メタ発言は控えるのだよ黒子。ちなみに『w』は(笑)とほぼ同義なのだよ」
「どっちかっていうと嘲笑ッスよね」
「まぁ一般常識になりかけの語句の説明はいいです。そんなに笑ってたって青峰くんだって間違えるかもしれないですよ」

青峰は黒子の悔し紛れの忠告を鼻で笑った。


「はぁ?んな間違えるわけねーだろ。わんわんおんだろわんわん…おん………」


あまり積極的に会話に参加せずしゃくしゃくとまいう棒をむさぼっていた紫原すら吹き出した。

「青www峰wwwっちwwwぷぎゃーwwwwww(^∀^)9m」
「わんwwwわんwww二回www二回間違いましたよこのガングロwww失敗回数ってメラニンの量に比例でもするんですかwwwww」
「なのwwwだよwwwwww」
「やめてよwww青ちん俺のまいう棒返せしwwwwww」
「るせー!!草生やしてんじゃねーぞてめーら!!」

箸が転げても笑えてしまうお年頃。わんわんお(^ω^∪)というたかだかひとつの単語で腹を抱えるキセキの世代だった。

「っはー、はぁー…ちなみに『草』は『www』を芝生に、見立てているのだよ、」
「緑間くん、親切、ですね、デレ期ですか…。ついでに『(^∀^)9mぷぎゃー』は人を指差し馬鹿にして笑ってる構図ですね…」
「よくわかる解説っすぅー…」

息も絶え絶えな緑間、黒子、黄瀬。新しいまいう棒を取り出して、紫原は緑間に言った。

「ねぇ、ミドちんは言える?」
「…………………は?」

イレギュラーな質問に緑間は硬直した。自分にふられるとは思っていなかった。じ、と視線が集まる。

期待が集まっているような。

「い…言える!言えるのだよ、えー、あー、」

ちゃんと言うべきか間違うべきか。ツンデレ電波眼鏡は何故か空気を読もうとした。

そして。

「……………………………………わんわんお…」

「「「「……」」」」

討ち死にだった。

緑間は思った。何このハンパない外しちゃった感。どっちにしろな気はすれど慣れないことはするものではなかった。

「ああ、ありがとうございました」
「ふーん言えねぇか」
「貴重な瞬間だったッスね」

わりとどうでも良さそうな反応がおざなりに返された。

緑間は下唇を噛んだ。紫原がごめんねー?と頭を撫でてきてもっと落ち込んだ。

「なんだ、皆集まってどうしたんだ?」
「あ、赤ちん」

▽赤司征十郎さんが入室しました。

「ふぅん、それじゃあ、今北産業」
「黄瀬まじ駄犬
 わんわんおの呪い
 緑間討ち死に」
「なるほどわかった、黄瀬が1on1を言い間違えてわんわんおなんて言ってるうちに皆言えなくなったと。緑間はお気の毒さまだね」

――なん…だと…?

「いやいや赤司くんそこは『なるほどわからん ログ読んでくる』の流れですよ」
「えーと『今北産業』は今来た、三行で流れを説明してくれという意味ッスよ、確か。普通説明受けても意味がわからないから黒子っちの言う流れになるんすけど…」
「……日常会話にログも糞もないがな……」
「つーかなんで○ちゃんねるとかチャット風の会話になってるんだよ」
「もとはといえば青峰くんですよ」
「お前が草など生やすから…あと紫原はそろそろ俺の頭を撫でるのをやめるのだよ。赤司がやばい目がやばい」

緑間の髪を心地良さそうに撫で続けていた紫原。緑間にガンを飛ばす赤司の目は多分浪花の○ーさんにも勝てるだろう。しかしその眼光は確かに嫉妬8割なのだが残りの2割は「あああああ敦と真太郎のツーショットしかもなんかすげぇ仲良くしてるぅぅぅぅかわぁぁまじかわぁぁぁぁはぁぁぁぁん」と心の一眼レフを惜しむことなく連写しているが故であった。

<●><○>カッ

ヒント:赤司はキセキ厨

「そういえば、紫原は言えたのかい?」
「んー?おれぇー?えーじゃあねぇ、赤ちん、わんわんお!!」
「今日も僕の敦はこんなに可愛い!!」
「キャプテン戻って来てください」
「208cmの巨体で恐れることなくあざといわんわんお…」
「そこに痺れる!」
「憧れるゥ!!」

緑間青峰黄瀬による流れるような連係プレー?しかし皆一様に嫌そうな顔をする。

「いや別に痺れてねぇし」
「憧れてもないッスー」
「無駄にネットスラング使うのやめようぜ。今のなんか無理矢理だった」
「解説も面倒です」
「『お前ら重婚』とか言われて嬉しいのか」
「「いや全然」」
「俺は狙ってやってないのだよ!誤解だ!」
巻き込まれた緑間は悲痛に叫んだ。赤司はふぅとため息をついた。

「間違えないよう間違えないようするから間違えるんだ。フロイトの説の中にも、抑圧した言葉ほど言い間違えて出てきてしまう、というのがあるくらいだからな」
「なんだかまともな話に」
「でもその話はかなり無理矢理なものなのだよ」
「でも、これで赤司くんが間違えたら一応全制覇です」
「ふった!?黒子っち勇者!!」

赤司はふっ、と不敵に笑った。

「俺が間違える訳ないだろ。わんわんお…ん…」

緑間。

「」耐えた。

紫原。

「」耐えた。

黒子

「」耐えた。

黄瀬。

「ふっ」ギリセーフ

青峰。

「ブッフォwwww」アウト

――青峰終了のお知らせ――

「この言葉って実はWJ発信だったんだよねー」
「えっそうなんすか!?」
「うんーらしいよー」

「さて、ここから青峰くん追悼になります」

黒子が無感情に告げる。

「無茶しやがって…」
「いい奴だったのだよ…」

案外ノリノリな黄瀬と緑間である。

「そういえば緑間っちの今日のラッキーアイテムはなんなんすか?」
「柄の赤い裁ち鋏だったのだよ。勿論大きいものを用意した。……あれ、どこだ?ちゃんと持っていた筈なのだが」

黙祷。



20121025

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