誠凜無駄話 01 | ナノ


※火←←←黒
※黒子がわりときもちわるい





「お菓子はいいからイタズラしたいです」
「どーしたお前」

練習終わりの部室。学ランを着た黒子は唐突に主張する。火神は不信感を露に黒子を見た。

「そろそろ10月も終わりです。10月31日にやってくるあの日の話ですよ」
「あぁ、Halloweenか。最近よくカボチャも見かけるよな」

火神は街の様子を脳に描く。紫とオレンジが増えて、ファンシーなお化けたちがのさばっている。イルミネーションがされている場所もあった。

「本場仕込みの流暢な発音ありがとうございます。ついでにハロウィンに欠かせないワードもお願いします」
「? Trick or treat?」
「くっ、ありがとうございますもちろんトリックで!!」
「黒子さん、どうどう」

口元に手をやり、何かを堪えるような仕草を見せた黒子の肩を福田がいなすように叩いた。目が死んでいる。

「いやでも実際、ハロウィンて昔はお菓子が目当てだったのに、年を重ねるごとにいたずらの方がしたくなりますよね。高校生になった今ではイタズラしたくてたまりません。主に性的な」
「おいやめろ」
「部室にエロ本持ち込んだのお前じゃないだろうな…?」

黒子が奔放にお年頃が考えそうな話をするので、伊月は思わずそう訊いていた。黒子は飄々と答えた。

「ただの裸に興味はありません」
「どっかの団長みたいな話し方をするんじゃありません」

訊かなきゃよかった。

「……まぁ、その話はおいといて。僕の中学では銅像をモールとかで飾り立てる輩がいましたね。パーティー用のグッズも持ち込んでガチで、です。勿論後で呼び出しです」
「あはは、だよねー」
「でもそういうの、なんか『よくやった!』って思っちゃうよな」

ハゲのおじさんがキラキラしている様子を想像したのか、小金井が明るく笑った。土田も頷いている。日向が首を傾げる。

「それ、もしかしてキセキがやったりしたの?」
「いいえ、バスケ馬鹿たちにそんなことにかまける時間などありませんでした」
「あー」
「ははっそうだな、でも赤司とかが一生懸命背伸ばして銅像にモール巻いてるところとか考えると笑えたのにな」

沈黙。

「木吉には自殺願望があったのか…」
「なんで敢えて地雷原に飛びこんじゃったかな…」
「水戸部、大丈夫だって!」

日向と伊月はぶるりと体を震わせた。水戸部も半泣きでおろおろと心配していて、小金井がすかさず安心させようと絡みに行っている。

木吉はいまだ自分が踏んだあまりに大きな地雷に気付いておらず、そういえば、と尋ねた。

「仮装とかはしたか?」
「ハッ、仮装で火葬場へ!キタコレ!!」
「うん伊月はちょっと黙ろうな。俺はそういうの参加したことないわ」

日向は首を横に振った。火神が手を上げた。

「オレ参加したぜ、ですよ。確か狼男、だったな」
「まったくけしからんですね。小さい可愛い火神くんが小さい可愛い狼男ですか。僕の息子が狼になっちゃいますよ火神くんは一体僕をどうしたいんですか」
「別にどうもしたかねぇよ。あ、黒子は何かやったことあるのか?」
「お前スルースキル上がってねぇか?」

日向は侮れないとばかりに火神を見た。思い出として強く記憶に残っているのか、黒子は特に考えることもなく答えた。

「僕は幽霊でしたね」
「元々影の薄さがリアルゴーストだろ!!」
「仮装要らなくねぇか!?」

部員は全力でつっこんだ。

「いえ、むしろ手抜きの仮装をして中途半端に目立たないとお菓子が貰えませんでした」
「だよねぇ!!」


しかし、黒子が仮装に参加した年のハロウィンでは後日「マジモンが出た」と一部で騒がれていたということを、彼らは知らない。お菓子が欲しかった幼い純粋な黒子でも、黒子はやはりどう頑張っても黒子であるようだった。



後日。

「火神ー、黒子ー!」
「んぁ?」
「なんですか?」

降旗が昼休みにわざわざ黒子と火神に会いにクラスまでやって来た。両手を背中に回して、いたずらでも企んでいるかのようににやにやしている。

そして降旗は二人に問う。

「今日は何月何日?」
「10月31日」
「と、いえば?」
「ハロウィンです」
「に言う言葉は?」
「「トリック・オア・トリート」」
「と、言うわけで、ハイッ」

降旗はカボチャの形をした棒付きキャンディーを二人に差し出した。

「へへ、昨日さ、帰りに見掛けて可愛くって思わず買っちゃったんだ。こないだハロウィンの話をしたせいかな?河原と福田も喜んでくれたし、これから先輩たちにも配ってくるつもりなんだよ!」

ほら、と広げられた手提げは降旗がさっきまで隠していたもので、中には透き通ったオレンジが窮屈そうに詰められていた。

「「………」」

じゃあまた部活でな!と嬉しそうに教室から出ていった降旗の背中を見つめ、カボチャのキャンディーを手に火神は言う。

「アイツ…たまに物凄く可愛くね?」
「奇遇ですね、僕も思いました」


Happy Halloween!!



20121031

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