プルルルッ


『はい』
「こんにちは」


あぁ久しぶりだね、と電話越しに言ってきたダイゴさんの声を聞くのは本当に久しぶりだった。

恋人同士の私たち。でも私はシンオウ地方を旅をしていて、対してダイゴさんはホウエン地方にいる。この関係を世間一般の人は遠距離恋愛というのだろう。


「チャンピオンはどう?」
『順調だよ。僕が負けるとでも思っていたのかい?』


まさか!と笑ってみたら電話の奥からも同じように笑い声が聞こえてきた。

ああなんて懐かしい感覚。お互いの都合が中々合わないまま何だかんだで1ヶ月以上は連絡を取っていなかったから本当に嬉しい。感無量とはきっとこのことだ。


『それにしても本当に久しぶりだね。僕が出張に行く前だったから……』
「1ヶ月ちょっと振り、今回は結構長かったよね」
『そうだな……あ、何か用事でもあったの?』


心臓がどきりと跳ねる。それと同時にある言葉が私の中を過(よ)ぎっていった。でもそれはとても言いにくい言葉だった。

一旦それを胸中にしまってから私は本題を思い出す。私に用事なんてものは全くなくて、むしろ寂しいから声を聞きたいという自己満足のために掛けてみただけなのだ。彼が忙しいということは誰よりも知っているはずなのに。


「ううん、何でもない。ごめんね忙しい中」
『そっか、僕もなまえの声が聞けてよかったよ。じゃあおやすみ』
「あ、あのね!」

『ん?』


優しい声。
きっと電話の向こうでは柔らかく微笑んでくれてるのだろう。そんな彼に、あんな言葉が言えるわけなかった。だって優しい彼はきっと私の望みを叶えてくれるだろうから。




「なんでもないよ、」





会いたいと泣き叫べば、あなたは逢いに来てくれますか
泣き叫ばなくても、きっと来てくれる。だってあなたは優しいから。



title;)エーデルワイス送葬曲




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