「ベポー…私を癒やし、てぇ!?」





おかしい。
あたしはベポの部屋に入ったのに、いきなりあたしを抱きしめてきたのは船長だった。それに横目でちらりと確認する限り、ベポの姿はない。





「久しぶりだなあ、なまえ?」
「……朝に会ったじゃん」





船長が耳元で呟く色香たっぷりの声も、今の気分の悪さには勝てないらしい。いつもみたいにゾワゾワしないし、逆にいつも感じていた私が馬鹿に思えてきた。

船長の胸板を押して部屋を出ようとした。すると案外楽に解放してくれたものの、手首をギュッと握りしめてきた。

これでは外に出られない。





「あたし、ベポに用事あるから」
「癒して欲しいんならおれが相手してやるよ、なあ?」
「結構」





つうか、アンタが原因だし。

なんて言えるわけもなく、私はひたすら掴まれた右手首を左手で剥がそうとした。







「まあ……昨日は確かにお前の意志を無視して激しくやり過ぎた。だからって無視することないだろ」





……なんてデリカシーのない男なんだろう。ていうか昨日の事は正直な話どうでもいいんだよ、あたしが気にしてんのはその前の日の晩の事、だったんだけど。





「もういいよ、許したげる」





なんか面倒臭くなってきた。あーダメだな、こんなんじゃ全く進歩もないよね。でも何やかんやで上手くいってんだしいいか。





「じゃあ……ヤるか」
「なんでやねん」







結局惚れたもん負け
つい許しちゃうんだよね。都合の良い女ってあたしの事?




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