瀞霊廷にも夏が来た。
久しぶりに帰省した私の実家では近々避暑という名の宴会が開かれるらしく、祭りだ何だと慌ただしさが増していた。
私はそんな女中たちの手伝いするでもなく、ただ縁側でゴロゴロしながらその光景を見ていた。
「……着物はだけてんぞ」
「いやん、居たんですか第三席」
そんな中、右側の廊下から現れたのはうちの隊の第三席さまさま。手には酒瓶を持っていて、顔をほんのりと紅潮させていた。
「何しに来たんですか」
「あー……やっぱりテメェんちの庭を眺めながら呑む酒は格別だな」
そう言うと第三席は手に持っていた酒瓶をラッパ飲みで飲み干した。そして胡座を掻き始める始末、どうやら居座る気らしい。
「ねえ第三席」
「あぁ?」
「私に会いに来たのか、それとも本当にお酒だけ飲みにきたのか」
ねえどっち?
可愛い子ぶってそう尋ねたら、第三席は私の頭をワシャワシャした。
「ガキが調子のんな」
「……第三席のイジワル」
「そうだなァ」
テメェが俺のことを一角さん、っつったら教えてやってもいいぜ。
意地悪そうな顔でニヤニヤと笑いながらこちらを見てくる第三席を見て、一瞬でも格好良いと思った自分を悔いた。
「…ばかハゲじゃないの」
「おい、テメェ今なんつった」
「さあ?」
第三席がなまえって言ってくれたら、もう一度言ってあげてもいいんですけど。
そう言ったら、今度は優しい顔で優しく頭を撫でてくれた。本物のお兄ちゃんみたいだと思った。暑さも忘れるほど夢中になった、炎天下の昼間の物語。
程よい距離感
恋愛感情とか、そんなもの今は要らないから