「なに、これ……」
両腕両足胴回りにきっちりと隙間なく付けられたのは鉄で造られたであろう枷。そのせいで完全に目が覚めていても筋肉が思うように動かせず、全身から力が抜けている感じがした。
「目が覚めたか」
「……誰?」
「フフッお前を買った男さ」
“買った”
男の放ったその言葉を聞いて私は合点が言った。そういえば私はオークションで売られたんだっけ……。
「お前、海軍に研究対象として監禁されてたらしいな」
「………」
「そして用無しになって売られた」
ああ、やっぱりそうだったんだ。私はもう、海軍の科学者たちにとって用無しになったから売られたんだ。
人生一体なんだっていうんだ。私は何も悪いことをしてないのに。
お金に困っていた親によって海軍に売られたというだけで、元はただの一般人だ。それなのにこんな事にまで巻き込まれて。
「お前の体、存分に研究させてもらう。人造人間さんよォ」
「すきにすれば、いい……」
「言われなくても」
ニヤリと悪魔のように笑うこの男のせいで、私は何もかもがどうでもよくなってしまった。
悲遭
悲劇のヒロインなんて可愛いものじゃない、まるで悲劇の大女優と言ってもいいくらい。