それ以上言わないで。
阿散井が私に言おうとした言葉を聞く前にそう拒否すれば、案の定あんぐりと口を開けた。何故とでも言わんばかりに目で訴えてくる彼は、何とも哀れに思えた。
寄りによって、何故私を選んだんだろう。そこら辺にゴロゴロ居座っている恋愛好きな女、恋愛に憧れる女、初恋すらまだな女を選んでくれれば良かったのに。
「俺じゃ、役不足ッスか?」
「そういう問題じゃないのよ」
例えば仮に、貴方を好きな女性が居るとしよう。私たちが付き合い始めることで、彼女は少なからず傷を負う。それで私が逆恨みになんて遭ったら、たまったもんじゃないわ。
それにね、彼女を傷つけてまで恋愛できるほど出来た人間じゃないし、義理もないし、ね。
「…寂しいッスよ、そんなの」
「ふふ、知ってるわ」
でもね、これが昔からの、私が唯一譲れないポリシーなのよ。それに、誰かの犠牲の上に成り立つ恋なんて気が引けてしまうわ。
避愛
私は一生恋が出来ないタイプの人間だって?上等じゃない。