「結婚するの」
幼なじみから発せられた言葉を聞いたとき、不思議と落ち着いていた。
まるであの子がそういう事を言うと予想していたかのように。
「それ、だけ」
俺の反応を見て落ち込んだあの子を見たとき、心臓が大きく跳ねた。
寂しい顔をして呟いた言葉が胸の奥に突き刺さる。
ブラッシングを終えたピカチュウは昼寝に入って、その小さな頭を撫でながら考えること数分。
俺はある答えを見いだした。
「あの子は俺が好きだったんだ」
小さい時からずっと俺の後ろをついてきていたあの子。
喜怒哀楽があまりに激しくて嫌になった時期もあったけど、結局は一緒にいて落ち着ける存在だった。
そしてもう1つ。
胸に突き刺さるような痛み。
「俺はあの子が大切だったんだ」
好きだったわけではない、けどいつも一緒にいたから気には掛けていた。彼女が楽しいと自然と俺も楽しく思える、共同体のような存在だったのかもしれない。
あの子が俺を好きだったことも、俺があの子を大切に思ってたことも少し考えてみれば解ることなのに。俺は考えようともしなかった。
そしてあの子の幸せを心から願ってあげることも、一緒に喜んであげることもできなかったんだ。
好きでなくても
あの子は大切な人だった