「久しぶりなまえちゃん」
「う、わぁ……」



目の前で爽やかに微笑むのは石マニアこと『ツワブキダイゴ』。あたしが思うにこの人ほど面倒くさい人はこの世に存在しない、うん、きっとそう。自信を持って言える。



「行こうエルレイド」
「待ってよ、ひどいなあ」



席から立ち上がろうとするあたしの前に遮るように立ち、行く手を阻むツワブキダイゴ。クスクスと上品に笑う彼に少しイラっときて、他人からの好奇の目線など気にも留めず自然と眉間の皺が寄った。



「キミのエルレイドを進化させてあげたのは誰だっけ?あの石は珍しかったんだよね〜」
「しつこい男は嫌いです。ていうかあなたが勝手にしたんでしょ」



そうだっけ、とか言ってとぼけてきたからイヤミを言って真顔で睨んでも向こうは何ら涼しげな顔で笑うからムカつく、とにかくムカつく。

付き合ってらんない、無視して横を通り過ぎようとしたら手をがっちり掴まれた(それも今度はかなり度の高い真顔をして。一体何がしたいんだろう、こいつは)



「僕と付き合ってほしい」
「 イ ヤ 」



断固拒否と言った態度を見せて、握られたままだった手を振り払って店を出て行く。一体何度目になるのかな、このやり取りって。





29回目のプロポーズ
次に入ったお店にもヤツは現れる絶対に。……ま、100回経てば少し考えてあげようかな。



BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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