「手、大きくなったね」
俺たちの手は恋人繋ぎでしっかり絡められていて、その繋がれた手を見ながらなまえは言う。彼女はいつも以上に優しい眼差しをしていた。
「いつ頃と比べてるんだ?」
「ふふ、10年以上前と。私たちも大人になったんだなあって」
そういってなまえは絡め合った手を強く握り返してきた。手のひらの大きさが明らかに違うせいなのか、上手く噛み合わない手に少し歯がゆさを感じる。だがその歯がゆさは不思議と嫌ではなかった。
折れそうなくらい細いのかと思いきや良い感じに柔らかい腕、俺よりも数倍白い肌、薄いピンク色をした少しだけ厚めの下唇、色素の薄い俺の髪とは真逆の黒く艶やかな髪……きっと俺は、俺には無いものを持っているなまえが大好きなんだ。
「なまえ、好きだ」
「いきなりなによ」
クスクスと手を繋いだ手とは違う方の手を添えて笑うなまえ。薬指には俺の渡した指輪が綺麗にはまっていて、何だかすごく嬉しくなったのは秘密にしておこう。
だって言ってしまえば何もかもなくなりそうで怖いだろう?
幸せの象徴がキミに
育まれた安心感にくるまれて