知らないことはない。

それが足枷になるってことも、知らなかった訳じゃないけど。

それでも知らないでおきたかった。







特有中の特有








僕は言葉を話せる。

瀬奈の言ってる『難しいこと』や『専門用語』だって、手に取るように理解できる。だって僕は知識を司るカミサマだから。


それなのに、どうして?

どうして僕らは結ばれないの?





「ねえ、どうして?」





瀬奈の瞳には、ヒトの形をした僕がしっかりと映っている。……そう、確かにヒトの形をしているんだ。

それなのに、僕にはソレが人には見えない。異形の何かとしか思えないのだ。


………当たり前、か。

僕は、人じゃないんだから。





「僕は、誰よりも知ってる。人とポケモンが結ばれることはないって事実を」


「だって、僕はカミサマだから」




「世界で一番、賢いんだから」





何故、僕はユクシーとしてこの世に生まれてきたんだろう?

普通のポケモンに生まれて瀬奈に会っていたら、 理性なんてものぶっ飛ばして、彼女を愛していたのに、





どうしても、それを手放せないんだ。







“知っている”辛さ






エムリットもアグノムも後押ししてくれるのに、どうしても踏み出せない。

この一歩、僕にはあまりに大きすぎた。





‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

大好きだって気持ちだけで本能的に楽しむ恋愛と、相手を理解しようとして楽しむ恋愛。やっぱり心持ちとか全然違うと思うんです。

2012/02/24 浅葱


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