「ふわぁ……」
5日ぶりの仕事場、毎度のことながらやっぱり休暇明けは眠たい。柄にもなく大あくびをしてしまったら、まさかまさかの檜佐木副隊長の目に留まってしまった。
「みょうじ」
「っは、はい!!」
檜佐木副隊長は5メートルくらい先からズンズンと此方に向かってくる。生憎私は目が悪いので檜佐木副隊長の表情が分からず、怒られるんじゃないかと内心ドキドキしていた。
「まだ疲れ取れてねぇのか?」
「い、いえ大丈夫です!!すいません執務中に欠伸なんて」
「そうか、ならいい」
檜佐木副隊長は私の頭を一回だけポンと軽く叩くと、そのままどこかに行ってしまった。
その触られた部分を抑えて檜佐木副隊長を見送っていると、後ろ姿が格好良いものだから何だか急に照れくさくなって、私は顔をうつ伏せで早足で仕事場に戻った。
「なまえ!!」
「うわあ!??」
前に歩くことに夢中になっていた私は後ろの気配に気付かず、後ろから乱菊さんが抱きついてきたのも全く予想できなかった。
お陰でいつも以上にびっくりしてしまって、自然と大声が出た。
「びっっくりしたぁ」
「……私のセリフですよ」
今日はどうしたんですか?と前半部分を少し強調して尋ねてみれば、乱菊さんは少し顔をひきつらせた。
「何よ、まだ根に持ってんの?」
「あはは」
「あははじゃないわよ。あんた、意外と怖いのね」
知られざる本性?
恥ずかしがり屋も人に慣れれば怖いものなし、なのかも。
「あ、今日飲み会あるから付き合いなさいよ!!」
「オレンジジュースがあるなら」