休暇開始から3日目、未だに体の調子が戻らない私は流魂街の隠れ小屋で寝たきりになっていた。ここなら流魂街の人もあまり立ち寄ることなはないし(ていうか来てもビックリして帰っちゃうし…)ましてや死神なんて尚更だ。
1ヶ月ぶりに感じる静かな休息に私は思わず息を落とした。それはため息ではなく、どちらかといえば安心感に近かった。
「気分はどうだい?」
「あ、こんにちは」
扉のない入り口からひょっこりと顔を覗かせたのは弓親さんだった。手には小柄なカゴを持っていているが、布が掛けられていて中身は分からない。
「結構いい感じです。今回は花太郎にも来て貰ったんで」
「花太郎?」
弓親さんは眉間にシワを寄せて不機嫌そうな顔をした。きっと名前が気に入らないのだろう、ずっと花太郎花太郎と連発して考え込んでいる姿は何ともおかしかった。
「四番隊の子です。霊力の回復をしてもらったんですよ」
「……そんなに、酷いのかい?」
さっきまでのふざけた雰囲気から一変、身を乗り出して心配そうな顔をする弓親さん。私はそんな彼をみて、ギュゥゥと心臓が締め付けられるのが分かった。
「大丈夫ですよ。今回が異例で、ちょっと強かっただけですから」
「……そう」
眉を下げて長い睫毛を落とす弓親さんに今度は心臓がズキンと跳ねた。その痛みの理由なんてすぐに分かった。きっと弓親さんが悲しそうな顔をしたからだ。そんな顔をさせたかった訳じゃないのに。
私は今の自分がどうすればいいか分からなかった。
「今夜、また来るよ。遅くなるかもしれないけど」
「……ありがとうございます」
弓親さんは立ち上がる前に私の頭を撫でてくれた。その時の曖昧な気持ちを、私は知らない。
隣り合わせの冷温
最近は素直に笑わなくなった、あなたをみて感じた。
その日の晩、真夜中くらいに目が覚めた。するとそこには私の右手を握ってスヤスヤと布団の外に眠っている弓親さんが。
自然と笑みが浮かんだのは、あなたが愛しく感じられたから?