今夜は月が綺麗だ。

三日月でも満月でもないけど、雲一つ浮かばないお陰で空の主役となるには充分だった。私が脇差しを手にとると両手で月にかざした。



「散らせ、星渦」







体が、重い。
まるで霊力を根こそぎ奪われてから任務に行けと言われた時くらいしんどかった。こんなに体の自由がきかないのは初めてだ。

仰向けで大の字になって空を見上げる。先程まで雲一つなかった空にはいつの間にか雲が掛かっていた。私には、それが酷く悲しかった。


「明日は晴れるかな……」


私は今、流魂街の離れにある湖のほとりにいる。今、と言っても三時間ほどこの状態なのだが。

用など既に終わっているのに疲労感のせいで立ち上がれない。これが疲労困憊の極みというものだなのだろう。このまま此処で寝てしまいたい、と瞼を閉じたその時だった。




「おつかれ、なまえ」




優しい声が頭上から聞こえた。
ゆっくりと瞼を開けてみたら、案の定そこには見知った顔が。彼は私のおでこにそっと手を載せて、こちらを見て微笑んでいた。


「今回はまた、派手に持って行かれたんだね」
「それ、禁句ですよ」


ああそうだったね、と彼は悪びれる事もなく濡れた私の髪を掬った。




「お久しぶりです、弓親さん」




まるで霞草のよう
本当にさりげなく、いつの間にか笑っていた。


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