「あ、そういえば乱菊さん」


私に用事って何ですか?
檜佐木副隊長が去ってまたしばらく雑談が続いていた頃、私は本題を思い出して乱菊さんに聞いてみた。
すると乱菊さんは団子を食べていた口を止めてポカンとした。


「用事?んなもんないわよ」
「……はい?」
「あたしが執務サボるための口実」


語尾にハートでもつきそうな勢いでウィンクをした乱菊さん。その言葉を聞いて、私は思わず深いため息をついてしまった。


「いやだってね、毎日多忙ななまえにご飯誘われたって言ったら隊長も昼休み延ばしてくれるんだもん」
「………はあ」


なんて人だ、乱菊さん(まあ楽しかったんだから全然いいんだけど。)でも今度からは乱菊さんにも少し厳しくしないと日番谷隊長に迷惑も負担もかけてしまう。


「なんか、いい気分しません」
「まあいいじゃない!」


あんたも仕事ばっかしてないでドーンとサボらないと倒れるわよ!

その言葉に私はハッとした。まるで今までが夢で、急に現実に引き戻されたかのような気分だった。
そういえば明日から連続休暇貰ってたっけ。私は袖から財布を出してお代の小銭をちょうど手にとった。


「御愛想、頼んでいいですか?」
「ちょっと、そんなに怒らなくてもいいじゃない」
「怒ってませんよ」


私がちょっと用事を思い出したんです。別に大した用事じゃないんですけど……少し急がなきゃ。

私は早口でそう言ってお代を乱菊さんに渡して店を出た。乱菊さんが怪訝な顔をしていたことなんて、全く気付かなかった。




隠された気持ち
焦りと落ち着きが混在することなどありえない。





「『大した用事じゃない』のに『急がなきゃ』、ねえ」


ねえなまえ。
あんたが瀞霊廷から消える日があるって噂が立ってるんだけど知ってた?あたしたち数十年来の仲よね、なんで何も教えてくれないわけ?

胸が軋むのは慣れている、だなんて。あたしも皮肉なもんだわ。


「どうしてこう、あたしの周りには秘密主義者が多いのかしら……」







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