「今月も見たわよ、瀞霊廷通信」
「え?」


ここは瀞霊廷内にある甘味処。昼夜を問わず大人気なこの店は、私や乱菊さんが仕事の合間に訪れるにはちょうど良い場となっていた。

私と向かい合うように座る乱菊さんはニコニコ、というよりニヤニヤとしている。乱菊さんの言いたい事が分かった私は何とも恥ずかしくて、思わず下を向いた。


「なによ、見られるのが恥ずかしいなら載せなきゃいいじゃない」
「痛いこと言いますね…」


乱菊さんが言っているのは、月一回発行される瀞霊廷通信に載っている私の小説『徒花』。

この小説は檜佐木副隊長に頼まれて3年前から瀞霊廷通信の穴埋めとして書いているのだが…。


「それが出来ないんスよねえ」
「っ檜佐木副隊長!!」
「あら修兵、いたの」


何の前触れもなく、窓からひょっこり顔を出した檜佐木副隊長。彼が手に持っているのは、きっとアレだ。


「それ、外部の人に見せてもいいんですか……?」
「おう、大丈夫だって」


檜佐木副隊長は八つ折りになっていたそれを机の上に広げた。そこにはグラフがぎっしりと書かれていて、乱菊さんはそれを見るなり眉間にシワを寄せた。


「……何コレ」
「瀞霊廷通信のアンケート調査です。九番隊業務の一つですね」
「ココ、見て下さいよ」


檜佐木副隊長が窓から身を乗り出して指差したのは『徒花』と書かれた欄で、そこには一桁の数字がいくつも続いていた。


「どういうこと?」
「こいつの小説、人気が高すぎて辞めるにやめれないんスよ」


なっ、人気小説家?と私の頭をポンポンと撫でた上に笑顔でこっちを見てくる檜佐木副隊長はなんとも格好良い。それに、そんな言い方をされて照れない訳がない。

私はまた、下を向いた。すると乱菊さんも檜佐木副隊長に便乗して一緒に私を褒め倒す始末。私ってこんなに恵まれてていいのだろうか。




兄や姉のような温もり
あなた達がいるから、私は諦めずにやっていこうと思えるのです


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