雨がザアザアと降る。一瞬見上げてみたけど、雨粒が目に入ったりして痛かったからすぐに下を向いた。ついさっき降り始めたはずなのに既に水溜まりが出来ているのが見えた。

私はもう一度下を向いたまま歩き始める。あれからどれだけ時間が経ったのか、どこに向かってるかなんて分からなくて、ただただ真っ直ぐ歩いていた。

すると私の目の前で止まる足が見えた。私の足も止まって、自然と顔を見上げる。


「やっぱり、お前か」


私の前に立っていたのは斑目第三席だった。









「あら、あんたなまえに手ぇ出してたの?」
「そんなんじゃねえよ。とりあえずコイツ頼んだ」
「しょうがないわね」


斑目第三席が私の手を引いて連れて行ったのは乱菊さんのいる十番隊隊舎だった。玄関に立っているあたしからはポタポタと水が滴り落ちて、玄関汚しちゃうなあと思ったものの動こうとはしなかった。
しばらく2人は話し合いを続けていたけど、私にはそれを聞く気力なんて無いに等しかった。斑目第三席が私の肩をポンと叩いたのと同時に私の意識ははっきりする。


「じゃあ俺は帰るぜ」
「わざわざ、ありがとうございました。斑目第三席」
「気にすんな」


お互い様だ、とすれ違いざまに呟いた斑目第三席の言葉に私は違和感を感じたが、やっぱり何も問い質そうとはしなかった。今の私には無気力って言葉がちょうどいい。









「乱菊さん」
「なによ?」
「私って馬鹿ですか?」
「今更じゃない」


借りた服に着替える私の後ろには、ボリボリとお菓子を食べて寝転ぶ乱菊さんの姿。あっさりと返された質問の答えに、思わず私は苦笑した。

そして止まっていた手を再び動かして、また乱菊さんに背を向けて着替えを始める。


「乱菊さん」
「………」
「乱菊さん?」
「………」
「乱菊さ、」
「ああああもう!!」


体中に伝わる温もり
抱き締められたんだと気付くのは、もう少ししてから


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