「はぁ……っはぁ……」


四番隊の第一救護施設に向かって走る。この際周りの人が私に向ける好奇の視線など気にならなかった。
先ほど斑目第三席に告げられた事が事実なら彼は、弓親さんはきっとこの先に居るはずだ。私の中の何かがそう直感していた。


「半月前、弓親が死にかけた」


初めは何を言われたのか理解できなくて、そのせいかやけに心も落ち着いていた。斑目第三席に聞けば久々の現世への任務で少し油断していたんだとか。
斑目第三席と別れた後、今度は先ほどとは対照的焦りしか出てこなくなった。死にかけたってどれくらい酷いケガを負ったんだろう、なぜ彼ほどの人が油断なんて突かれたんだろう。

焦りは恐怖となり、現在に至る。


「院内ではお静かに!」


真新しい死覇装を着た四番隊隊員の甲高い声が聞こえる。きっと私に向けられたものだろうが、足度を抑える気にはなれなかった。


「突き当たり、二つ目、」


それが唯一、私が自ら斑目第三席に聞いた情報だった。目の前にはすでに突き当たりが見えている。もうすぐだった。
なのに、


「これ以上は通せません」
「花、太郎……」


私の行く道を憚む者が現れた。花太郎だった。私は花太郎を押しのけて進もうとするが花太郎は俄然動こうとしない。何度花太郎を退けようとしても、彼はただ私の前に立ちふさがった。


「お願い、どいてよ…!」
「、ごめんなさい」
「なんで…!?誰にだって彼を見舞う権利くらい、」
「っ綾瀬川さんが!」


「なまえさんが来たら、追い返せと……」


花太郎の口から告げられた言葉はあまりに衝撃的なものだった。
私はそれを認めたくなくて、全身全霊渾身の一撃で花太郎を張り倒した。そして突き当たりから二番目、彼の名前プレートが付けられた扉を勢いよく開けた。


「弓親さん!!!」


開けられた窓を覆いながらひらひらと舞う白いカーテン、無造作に型くずれしたベッドシーツ、一際目立つ整理整頓されたテーブル。


そこに、彼の姿はなかった。


酷く優しい拒絶
無機質な部屋が、何とも疎ましく感じられた。



「なまえさん、」
「……ごめんね、花太郎」


立ち竦む私の後ろから花太郎の心配そうな声が聞こえる。そんな彼を押しのけて部屋を出る(今度は簡単に退いてくれた)

彼の姿は見えなかったのに、霊圧は感じられた自分が嫌になった。いつもは自慢だった秀でた感知機能を、この時ばかりは呪った。

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