ゆっくりと唇が重なり合う。
舌を絡めるような肉欲的なものではなく、どちらかと言えば付き合いたてのカップルがするような可愛らしいものに近い。何をするわけでもなく、ただお互いのそれを押しつけて時々はむような、そんなキス。

お互いの息を入れ替えているうちに、エースの呼吸の音が聞こえるような、そんな気分に陥った。

このままずっと続けばいいのにと、嫌でも思ってしまう。


「………」
「………」


でも長くは続かない。
エースは何の前触れもなく、そっと唇を離していった。熱っぽい余韻があたしの唇に残る。ああどうしよう、彼の顔が直視できなくてどうしても視線を下げてしまう。


「……騒がしいな、戦闘か?」


エースはドアの方を見ながら言った。そう言われてみると、確かに微かながら皆の雄叫びが聞こえた気がした。あたしもつられてドアを見た。


参戦して皆を助けないと、皆を護らないと。でも離れたくない、まだ一緒にいたい。そんな気持ちが溢れ出てきてしまう。私とエースはそんな関係ではないのに。

ただの、仲間なのに。


「俺たちも行くかっ」
「……うん!」


わざとらしく明るい様子で尋ねてくるエースに、あたしも空元気で応えた。だってエースの目が、何も言うなって語っていた気がしたから。





曖昧ライン




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
こういう場合、女の子は悲しいですよね。もしかして自分たちは付き合ってることになってるのか、或いはただの“相手”となってるだけなのか。でも男の子にも色々な葛藤があると思うのです。でもお互いに踏み出せない関係…虚しいですよね。


20110204 浅葱

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