今日、私は『私』が『私』では無かったのだと知った。知らされた。
不思議と驚かなかった。
不思議と憎しみは生まれなかった。不思議と涙は出なかった。
そして何故だろう、不思議とシンクの顔が見たくなった。
許容範囲、オーバー
「同情でもしてほしいわけ?」
第一声はそれだった。
相変わらずの皮肉だねと言えば、シンクは何も答えなかった。あたしは苦笑いして冗談だよと告げる。
「ただ、聞いて欲しかっただけ」
あたしは机に腰掛けて、足を宙にブランと投げ出す。交互に動かすその足だけはやたらと元気で、無意識の内に何度も何度も繰り返していた。
シンクがイオンさまのレプリカだってことを知ってる。今のイオンさまがレプリカだってことも知ってる。
でも逆を言えばそれしか知らない。なのに、あたしは今、果てしなくシンクを求めて求めいるのだ。
この感情は、何なのだろう。
「ねえ、シンク」
「……何?」
いつもより刺々しさのない声色でシンクは呟く。もしかしたら、シンクなりに気を使ってくれてるのかな?だったらあたし、嬉しくて泣けてきちゃうかも。
「あたしって、なんだろ」
今まで抱くこともなかった疑問、それほど重要視しなかった疑問。待てども待てども、彼から返事は返ってこなかった。
レーゾンデートル
20101230 浅葱