火影岩にぺたり、座り込み、俺はそこから見える懐かしい里の景色にようやくホッと息を吐いた。長い長い、俺にとっては長過ぎるほどの任務期間。枕が変わると眠れねえ、なんていうほど神経質じゃねえはずの俺の心。けどやっぱり精神的にかなり張り詰めてたみてえだ。ごろり。そのまま体を地面に投げ出して、俺は夕暮れに染まった空を眺めた――







「おい、シカマル」



 不意にかけられた声。俺は寝転んだまま顎を仰け反らせ、声の主へと視線を向けた。
 そこにはいつもの千本を口にくわえたゲンマさんが俺の顔を覗き込むように見下ろしていた。



「あー……なんすか?」

「……お前正門から入らなかっただろ?」



 その呆れたような口調に俺が訝しく思っていると、ゲンマさんは口端を軽く歪めて楽しそうに笑った。



「いいのかよ?」



 その後に続いたゲンマさんの言葉に、俺は慌てて起き上がって正門へと走り出していた――





懐郷





「お前の彼女、正門前で待ってたぜ?」





 里の景色よりも何よりも、帰ってきたと実感できる存在――




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