「ねえ……?」

「後でね、カカシ」



 構って欲しいサインを送る俺に間髪入れず返ってくる彼女の拒絶の言葉。視線はさっきから読んでいる雑誌に向けたまま、俺と目も合わせようともしてくれない。
 もともと淡白な彼女、そんなところに惹かれたんだけど、もうちょっと恋人らしく甘い時間を過ごしたいじゃないのよ。ふてくされて自分の愛読書を広げた俺、だけどさっぱり内容が頭に入らない。あーあ、つまんない。











「カカシ」



 ようやく雑誌を読み終えたらしい彼女が声をかけてきたけれど、その頃には俺はかなりご機嫌斜め。今さら。そんな思いが俺に寝たフリを決め込ませる。



「寝てるの?」



 近付く彼女の気配に内心ドキドキしているけど、まだ起きてやらない。ほっとかれる寂しさを少しは分かればいいんだ。



「しょうがないわね……」



 彼女の呟く声がしたかと思うと、すっと立ち上がる気配。そのまま置いていかれるんじゃないか、急に不安になって慌てて起き上がろうとした瞬間。ふわり、体にかけられた暖かい毛布。驚いて顔を上げた俺に降りかかった彼女の笑顔。



「風邪、引くわよ?」



 ああ。やっぱり彼女を好きになって、良かった――





簡単すぎるほど、簡単に





 また俺は、彼女をもっと好きになる――







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