今日も今日とて私は窓際の席に座り、窓の外を通る人々を眺めていた。子供の頃から体が弱く、今現在も外出することが少ない私にとって外の世界を唯一見ることができるのはこの窓際だけ。楽しそうに走り回る子供たちや忙しそうに早足で通り過ぎていく大人たちを眺めることはもはや私の日課であり楽しみにもなっていた。


「カカシ先生! 遅いってばよ」
「いやー……今日は人生という名の道に迷ってね、」
「はい、嘘ー!」


 そして最近の私の興味の対象はこのやり取りをしている忍さんたち四人だ。どうやら待ち合わせ場所を私の家の近くにしているらしく、ほぼ毎日こんな会話が聞こえてくる。文句を言う割にすごく怒っているわけでもない金色の髪の男の子と桜色の髪の女の子。ふたりと若干距離をおいた黒色の髪の男の子。それから一番年長者であろう銀色の髪の男のひと。なんともカラフルな集団で最初は忍だとはとても思えなかったが、慣れとは恐ろしいもので今やまったくもって気にならない。それよりも彼らの言動や行動のほうに私は興味を掻き立てられていた。
 たとえば桜色の髪の女の子。明らかな好意を黒色の髪の男の子へと向けているのだが、その一方で金色の髪の男の子にはやたらと厳しい。けれど時折優しい一面を垣間見せるため、私の中ではすっかりツンデレというイメージが固定している。次に黒色の髪の男の子だが、彼は桜色の髪の彼女よりも数段上のツンデレさんだと思う。いやデレをほとんど見せないあたりツンツンさんか。絶対に馴れ合わないオーラを前面に押し出す彼に内心、人生上手く渡っていけるのかと勝手に不安になっている。それから金色の髪の男の子。彼が私の中で一番の心配のタネだ。なにしろ何を根拠に自分に自信を持っているのか、口を開けば「火影になる」だの「里一番の忍になる」しか言わないのだ。目標を持つのは良いことだと思うが、普通はもっと手に届きそうなところからじゃないのか。まだ下忍さんらしいが、せめて上忍さんになってから言って欲しい。でないと後々自分の首を絞めることになりそうで本当に心配なのだ。


「はーいはい、今日の任務はDランク三件。まずは草むしりからね」


 聞こえてきたのは年長者であろう銀色の髪の男のひとの声。先生と呼ばれていたから多分上忍さんなんだろうが、彼もある意味心配だ。待ち合わせには毎回遅刻、挙げ句にすぐにバレる嘘を平然と口にする上忍さんなんて他にいるのか。仮にも指導する立場の人間がこれで、彼らは本当に一人前に成長できるのだろうか。


「じゃ、出発ー」
「サスケ! どっちが早く終わらせるか勝負するってばよ!」
「オレがお前に負けるかよ。このウスラトンカチ」
「そうよナルト! アンタなんて百年経ってもサスケくんに勝てる訳ないじゃない!」
「お前ら、もうちょっと静かに歩けないのー?」


 遠ざかっていく騒がしい声。ようやく任務へと向かうらしいが、時計はすでに昼近くを差している。そろそろ私のもとへ昼食が運ばれてくる時間だ。名残惜しく思いながら立ち上がり、もう一度彼らの後ろ姿を目で追いかけて小さく笑った。


「……なんだ、気付いてたんだ」


 三人の後ろを歩く銀色の髪の男のひとがこちらを見ることなく、けれど明らかに私のいる窓に向かって手を振っていたのだ。たったそれだけのことなのに外の世界と繋がったような錯覚を起こしたのか、視界に入らないと理解していながらも私は手を振り返さずにはいられなかったのだった。


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