「なあ……?」

「ごめん……今日はダメ」

「今日も、やろ?」



 拗ねたように口を尖らせるギンにごめんね、もう一度謝ってから、私は早々に布団に潜り込んだ。
 ここ最近、虚の出現率が高いせいで前線に出てばかりだったせいか疲れ果てた心と体。
 せっかく会いに来てくれたギンと甘い夜を過ごす気にもなれずに一週間が過ぎようとしていた。





 はあ。背中に悩ましげなギンの溜め息を聞きながらも、私はもう半分夢の中で。
 あと数分もしない内に深い深い眠りに落ちるだろうという瞬間──。
 ぱさり。布団を捲って滑り込んできた大きな体がすっぽりと私を包み込んだ。



「ギン…?」



 とくん。とくん。ギンの鼓動があまりにも耳にゆったりと心地良く響いて。
 腕の中、もぞ、体を捩って見上げれば、口角を緩く上げたギンと目が合った。



「こんくらい、許してな?」

「ん……ごめん、ね……?」



 体は大きくても人一倍構われたがりのギンにしては珍しい控え目な言葉に一瞬胸がちくり、痛んだ。



「ええて。疲れてんねやろ?はよ寝な」

「ん、ありがと……」

「そんかわり──」



 規則正しく刻まれる鼓動に、再び瞼を閉じた私の耳へと楽しそうなギンの声が滑り込んできて。
 紡がれたのは、どんな精神安定剤よりも心安らぐ言葉だった──



「元気になったら、ようさんボクを甘えさせてな?」





精神定剤





 お互いさまっちゅうことや──ボクもキミも、な?



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