――柔らかな日差しが窓から差し込む資料室で、私は山のような書類に囲まれて溜め息を吐いていた。……これ、一生かかっても終わらないかも。



「今回の依頼にあたっての関係資料、三日でまとめとけ」



 さらりとなんでもないような顔でそう言ったシカマルの顔が私の脳裏をよぎる。



「三日ね……」



 パラパラと資料を捲りながら溜め息混じりに呟くと。



「……こんぐらいお前なら楽勝、だろ?」



 いつの間に入って来たのか、シカマルの声が不意に頭上から降ってきた。



「……私はどこかの誰かさんみたいに優秀な脳は持ち合わせていませんから?」



 嫌みのつもりで吐いた言葉と共にちらりと視線をシカマルに向ければ。やれやれといった顔のシカマルが山積みになった書類のいちばん上に手を伸ばした。



 ――窓から差し込む春の日差しは柔らかくシカマルの姿を包んでいて。まるでシカマル自身がこの柔らかな空間を創り出しているような錯覚さえ覚えてしまう。



「おい……、目開けたまま寝てんじゃねえの? なまえ」



 ぼんやりとその光景に見惚れていた私に、不意に振り返って笑う顔。



「んー……確かに眠いけど、そんな器用な真似は私には出来ない」



 本当は眠くなんかないくせに、シカマルに見惚れていたなんて口が裂けても言えない私は、大きく伸びをしてみせた。すると、シカマルの長い指が不意に伸びてきて。



「……バーカ、眠くなんかねえんだろ?」



 伸びをしたままの態勢で顎を固定された私の目の前には、至近距離で不敵に笑うシカマルの顔。



「な、に……シカ、」

「……寝られちゃ困っからよ……眠気覚まし?」



 そういって近付いてきた薄い唇は優しく私の唇を塞いで。



「ん……っ、シカ、マ……」





 ――ざらりとした舌の感触が唇の輪郭をなぞっていく度、甘い痺れが体中に駆け巡っていく。いつの間にか私の顎を固定していたシカマルの手は髪を梳くように私の後頭部へと回されて。啄むように口付けていた唇がその瞬間、息も出来ない程に強く深く、私の唇に圧力をかけてきて。
 私はもう何も考えられないまま、シカマルの首にそっと腕を回した――





口付け日和





(ね、シカマル、資料は……?)

(んな可愛い顔して見られたら……我慢できねえだろ?)

(後で手伝ってよね…?)

(…了解)



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