色とりどりの洋服が並ぶショーウィンドウの前で、あたしはもうかれこれ10分以上悩んでいた。
 冬らしい色合いの暖色系の淡いオレンジ色のワンピース。
 普段あまり着る物にこだわらないあたしが、珍しくそれに目を奪われたのはきっと。



 それを着たあたしを見てアイツはどんな顔をするのか――



 なんて、ちょっとした好奇心が頭を擡げたからかもしれない。





「……買おうかな……」



 ようやく決心したあたしが入り口へと足を向けた瞬間。



「やっと買うのか?」



 すぐ後ろからかけられた声に、あたしは思わず固まってしまった。
 ガラス越しに目を遣ると、呆れた表情を浮かべたシカマルが寒そうにポケットに手を突っ込んであたしを見下ろしていた。



「シ、シカマル……いつからそこに……」

「あ?10分程前から」



 …ほとんど見られてんじゃないの、あたしのバカ…



 恥ずかしさから振り向けないあたしの肩に顎を乗せたシカマルは、ガラス越しにあたしを見つめてきて。



「……買ってやろうか?」



 ――なんて、さもなんでもないように、とんでもないことをさらっと言うもんだから。
あたしは返事を返すことすら出来ずに、高まる鼓動をシカマルに悟られないように俯くしかなかった。



「……ただし、ひとつだけ条件、な……?」

「え…」



 思わず顔を上げたあたしの耳元で、口端を僅かに上げたシカマルが囁いた。



「……これ着んのは、オレがいる時だけ、な……?」

「は……?」



 言葉の意味が分からずに、ただ呆然とするあたしにシカマルはククッと笑うと。



「オレ……独占欲強えから、覚悟しとけよな……?」



 そう言って、見た目よりも逞しいその腕で、あたしの体をぎゅっと抱き寄せた。





(……つうか、オレの存在に早く気付けよな、ばーか……)





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