「……今年もまた? シカマル……」

「おう、まあ……よろしく?」



 夏休み終了目前、散々ナルト達と遊びほうけてたオレは、アカデミーの課題を抱えてなまえん家の玄関に立っていた。
 課題なんてめんどくせえモン、はなからやる気がねえからオレの課題は当然真っ白なままで。それでもそのまま提出すれば、間違いなく更にめんどくせえイルカの説教をくらう羽目になるのは目に見えているから。



「毎年毎年懲りないね」



 呆れたように溜め息を吐いて玄関にスリッパを並べて踵を返せば、それがなまえの了解サイン。とりあえず今年も断られなかったことに安堵したオレは、いそいそとなまえの後について家に上がり込んだ。



「さすが……完璧じゃん」



 綺麗な文字が埋め尽くされたノートに視線を走らせて思わず感心して呟くと、照れくさそうに頬を染めてなまえがはにかむ。
 かりかりかり。オレの走らせるペンの音だけが静かな部屋に響く中、傍らではなまえが何やら真剣な顔をして雑誌のクロスワードに取り組んで、オレが課題を写し終わるのを待っている。
 なんつうか…こうやって黙ってんのに部屋に流れる空気は変わらず緩やかで、穏やかで。コイツの側にいると落ち着くのは、きっとこの空気があまりにも心地良いせいだ。



「……どしたの?」



 ぼんやりと考えてるうちに動かしてた手が止まってたらしく、不思議そうな顔でなまえが呟いた。
 やべえ…なんか意識しちまう。不意にやってきた心臓の激しい鼓動をごまかすように慌てて視線を戻しても、一度鳴りだしたモンがそう容易く収まるはずもなく。きゅうきゅうと心臓が締め上げられる感覚に堪えきれず俯いたオレの耳に不意に届いたのは玄関のチャイムの音。



「……? 誰だろ」



 ぱたぱた。遠ざかる足音にオレはホッと安堵の息を吐いた。
 しばらくして戻ってきたなまえの背後には仏頂面の悪友の姿。お茶を淹れになまえが出て行った途端、オレに向かって口を尖らせる。



「……なんでお前がいんだよ」



 はあ? そりゃこっちの台詞だっつうの。大方お前も課題を写させてもらおうってクチだろが。
 未だブツブツ言うのを軽く無視して再びペンを走らせる。どうやらコイツが現れたことで、さっきまでの激しい鼓動も落ち着いたみてえだ。



「お待たせ」

「ああ、さんきゅ」

「なまえ、オレも!」

「はいはい」



 とん。苦笑いを零しながら、なまえの細い腕が目の前を横切って冷えた飲み物を置いて。すとん。まるでそこに座るのが最初から決まってたみてえにオレの隣になまえが座った。



「……なんでシカちゃんの隣なワケ?」



 不服そうな声が響いた瞬間、顔を上げたなまえとオレの視線がバッチリぶつかって。心臓が再び激しく鳴り、火照った頬がオレの気持ちを再認識させた──











「アカデミー始まったらよ……、一緒に帰らねえ?」

「! う、うん!」

「あのー……オレは?」






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