どろどろに疲れた体で漸く辿り着いた自宅。体力には自信のあるほうだったのに、今は口を開くのも億劫で。部屋に入るなり着替えもシャワーもせず、倒れ込むようにリビングの床に転がった。
 横になったことで、疲れがじわじわと体中に浸透していくようで。少しだけ。そう思って瞼を閉じた瞬間、私の意識は途切れた――









 ぬるま湯に浸かっているような心地よい温もりを感じてそっと手を伸ばせば、途端に包まれる掌。きゅ。握り締められた力に夢ではないことを認識した瞬間、飛び起きた私は目の前にいる人物に目を見開いた。



「な、奈良くん……?」

「……うす」



 そこにいたのは、ついさっきまでツーマンセルで任務をこなしていた相方の奈良くんで。いつも通りの表情なのに見つめる眼差しは握り締められた掌と同じで温かい。



「今日の任務キツかったんで気になって……んで来てみりゃ鍵開けっ放しだし?」

「あ、うん……すみません」



 く。謝った途端、鼓膜に響く奈良くんの声と、ぎゅ、更に力のこもる掌に私の鼓動が急激に早くなる。



「あの……もう大丈夫だから」



 繋がれた手が鼓動の早さに伴って、うっすら汗ばんでくる。恥ずかしくて、気付かれたくなくて奈良くんの手の中、自分の手をそっと動かした。



「離したくねえ……つったら?」



 どきん。奈良くんのまっすぐな瞳の中、目を見開く自分が映って。



「な、奈良くん……」

「ん、なんすか?」



 おそるおそるその名を呼べば、なんとも優しい眼差しで微笑みが返された。綺麗だ。男の人に対する形容詞ではないのかもしれないけれど、目の前で私に向けられる微笑みはそうとしか言いようがなくて。
 心の中で私は、その微笑みを持つ奈良くんに白旗を掲げた――





 その顔、ずるい





 そんな顔見せられたら、期待、しちゃうじゃない――








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