よく晴れた日曜日。シカクは気配を殺し、息子であるシカマルの後をつけていた。それというのも三日前、偶然聞こえてしまった会話に端を発する。



「じゃあ三日後な」

「うん。またね」



 照れくさそうに言葉を交わすふたりは初々しく、端から見るとそれはとてもほほえましい光景だった。ようやく平和な日常が戻り、なまえとシカマルの関係が世間一般でいうところの恋人と呼ばれるものになったことを知ったのはつい先日。嬉しいと思う反面、なまえの視線がシカマルだけに向くのかと思うと、なまえを娘のように可愛がっているシカクが面白くないと思うのは当然のことだった。三日後、偶然にも自分は休み。そうなれば何をしていても落ち着かず、家を出たシカマルの後を追うようにシカクも家を飛び出したのだった。



「シカマルのヤツ……なまえに手出したらただじゃおかねえ……」



 もはやただの親バカに成り下がったシカクは実の息子であるにもかかわらず、愛娘のなまえを誑かす男としてシカマルを認識しているようだ。まさに鬼のような形相で先を歩くふたりを睨み続ける上忍班長は、すれ違う人々の奇異の視線など気にする余裕などなかった。ふたりの行動から目を離すわけにはいかないとばかりにただひたすらに後を追う。



「……なにをやっとるんじゃ」

「じ、自来也さま!」



 自来也の呆れた声にシカクはようやく我に返って慌てて姿勢を正す。バツが悪そうに頭を掻いたシカクは渋々、といった具合に親指で今まで睨みつけていた先を指し示した。と、次の瞬間シカクはぎょっと目を見開いた。それまでの表情から一変、額に青筋を浮かび上がらせた自来也の表情はまるで般若と見紛うほどに怒りに満ちていた。



「じ……自来也、さま」

「……シカクよ」

「……はい」

「お前んとこの息子はよほど早死にしたいらしいのう……?」



 摂氏零度以下とも思える冷えきった笑顔の自来也に肩を叩かれたシカクはまさに顔面蒼白だった。細められた目の奥はまったくもって笑ってなどいない。それどころか明らかな殺意がちらちらとその瞳から漏れだしていて、嫌な汗が背中を伝っていく。



「い、いや……その、」

「確か、一人息子だったよのう……」



 その時の自来也の顔をシカクは一生忘れられないと思った。どんな極悪人も逃げ出すだろうその悪意に満ちた表情は、今までの自来也のイメージを打ち砕くには充分過ぎるものだった。自分は自他共に認める親バカだと思っていたが、さらに上をいく自来也の親バカっぷりにシカクは内心溜め息を吐いた。



「一緒に……行きますか? なまえに手出されたらオレも嫌なんで」

「そうじゃのう……行くか」



 こうして親バカが新たにひとり加わり尾行は再開された。しかし親バカふたりはまだ気付いていない。時折漏れ出す殺気からすでにシカマルが自分たちの存在に気付いていることを。そして心中どうやって撒こうかと考えていることを。
 こうしてここにシカマルの長いながい一日が始まったのだった。



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